:hover
を使ったマウスカーソルの追跡とプライバシー問題
JavaScript を使わず CSS の :hover
疑似クラスでマウスカーソルの動きを追跡するというプライバシー面の話題。
- Researcher Finds CSS-Only Method to Track Mouse Movements(
www.bleepingcomputer.com
) - davy (@davywtf) 2019年5月3日 11:59
Grid 状に細かく区分けしたボックスのそれぞれに :hover
疑似クラスで別々の画像を background-image
などで指定し、その画像のアクセスログをチェックすることで、マウスカーソルの動きを把握することができるというものですね。
簡単なコード例を挙げるとこんな感じです。
<style>
.grid {
display: grid;
grid-template-columns: repeat(2,1fr);
width: 200px;
}
.box {
height: 100px;
width: 100px;
color: #fff;
background: #000;
}
.box1:hover {
background-image: url(box1_hover.png);
}
.box2:hover {
background-image: url(box2_hover.png);
}
</style>
<div class="grid">
<div class="box box1">BOX1</div>
<div class="box box2">BOX2</div>
</div>
これで BOX1 の上をマウスカーソルが通過したら box1_hover.png の画像が読み込まれ、 BOX2 を通過したら box2_hover.png が読み込まれるので、それらの画像ファイルのアクセスログを監視すればマウスカーソルの動きがある程度分かってしまうわけです。
実は似たような話はずっと昔から言われていて、以前は :visited
を使ったプライバシー上の問題がありました。
<style>
.link1:visited {
background-image: url(link1_visited.png);
}
</style>
<a href="https://example.com/1" class="link1">Link</a>
このようなページを用意すると、 link1_visited.png へのアクセスログを見ることによって、ユーザーがそのリンク先にアクセス済みかどうか分かってしまう事象がありました。
この対策のため、2010年〜2011年にかけて各ブラウザは :visited
に指定できるスタイルを color
や background-color
など色関係のものだけに制限する方針が取られました。
- プライバシーと :visited セレクタ - CSS: カスケーディングスタイルシート | MDN(
developer.mozilla.org
) - CSS の :visited に行われるプライバシー対策 | Mozilla Developer Street (modest)(
dev.mozilla.jp
)
このプライバシー上の問題は仕様にも書かれており、「Selectors Level 3」では下記のような記述があります。
- ちなみに、いつ頃からこういう話題があったのか遡ってみたのですが、 CSS 2.1 の2003年1月28日版 Working Draft では既に似たような記述が見られるんですね。
:visited
のプライバシー問題が話題になっていた頃は、多少の不便があることを承知の上でブラウザが指定可能なスタイルを制限するという対策が取られたわけですが、さすがに :hover
でそれをやるのは影響が大きすぎて現実的でない気がします。どのような解決策があるのでしょうか。