Tokyu か Tōkyū か

「東急」を英語で書くと「Tokyu」です。より正確な言い方をすると、東急電鉄株式会社(www.tokyu.co.jp)の英文名は「Tokyu Railways」となります。しかしこれはあくまで企業名のこと。路線名の表記はマクロン(長音記号)の付いた「Tōkyū」となっていることについ先日気付きました。

公式サイトに掲載されている全線路線図(PDF)(www.tokyu.co.jp)(2019年10月1日バージョン)を見てみると、見出しである「東急線・みなとみらい線路線案内」の英文は「Tokyu Lines・Minatomirai Line」であるのに対し、路線名の「東急多摩川線」は「Tōkyū Tamagawa Line」となっていることがお分かりでしょう。

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東急全線路線図の見出し部分オリジナル画像
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東急全線路線図の路線名部分オリジナル画像

東急電鉄の鉄軌道線のうち「東急多摩川線」のみは「東急電鉄の多摩川線」という意味ではなく、「東急多摩川線」が正式名称なのですが、他の路線でも社名付きの表現が行われる場合は「Tōkyū Tōyoko Line」のようにマクロン付きになります。なので、「東急池上線、東急多摩川線」のように、多摩川線と他路線を併記する際に英文表記で「Tokyu」と「Tōkyū」が混在するといった事象は起こりません。

いくつか実例を見てみましょう。

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おなじみ東急電鉄のコーポレートマークは「TOKYU RAILWAYS」または「TOKYU CORPORATION」(マクロンなし)オリジナル画像
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池上線、東急多摩川線の車内路線図(2000年バージョン)における路線表記は「Tōkyū Ikegami Line」「Tōkyū Tamagawa Line」(マクロンあり)オリジナル画像
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蒲田駅ホームにおける「東急多摩川線」の路線表記は「Tōkyū Tamagawa Line」(マクロンあり)オリジナル画像
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新7000系の車内LCDにおける「東急多摩川線」の案内表記はなぜか「Tokyu Tamagawa Line」(マクロンなし)オリジナル画像

さて、ここからは鉄道ファン視点でのちょっとマニアックな話。「東急○○線」ではなく単に「東急線」と表記される際の「東急」はどちらの表記が正しいのでしょうか。

東横線、田園都市線など全路線を含めた総称としての「東急線」の場合、先に挙げた路線図(PDF)(www.tokyu.co.jp)ではマクロンなしの「Tokyu Lines」と表記されています。この場合の「東急線」は路線名よりは企業名としての意味合いが強いためと推測されます。

では単体の路線名としての「東急線」の場合はどうでしょうか。数年前の一時期、早朝の鷺沼始発、大井町行きの列車(w0s.jp)では「東急線をご利用くださいましてありがとうございます」という自動放送が流れていました。本来であれば「東急田園都市線を……」となるのですが、そのように案内すると渋谷方面の列車と誤認してしまう乗客が出るかもしれませんし、かといって鷺沼発車時点で「大井町線」と案内するのは正確ではありませんから、あえて路線名を言わずに「東急線」と呼んでいたのでしょう。

  • 2009年の大井町線溝の口延伸以降は「東急田園都市線をご利用くださいまして……」に変わっています。

この場合の「Tokyu」にマクロンをつけるのか否か。ひとつ断言できることは、先の鷺沼始発列車の英語放送の部分では「Tokyu Lines」ではなく単数形の「Tokyu Line」と発音していたので、東急電鉄の全路線の総称という意味での「東急線(Tokyu Lines)」とは意味合いが異なることは間違いないでしょうが、

  • 東急電鉄のとある一路線という意味で、企業名の側面が強いと捉えるなら付けない
  • 「東急田園都市線」を略した「東急線」と捉えるなら付ける

のどちらが正解かは判断付きにくい気がします。駅の案内表示などの実例があれば答えが分かりそうな気がしますが、東急電鉄自身が設置する看板で特定の路線を単に「東急線」と表記しているものって存在するのでしょうかね。

根本的な疑問として、なぜ社名はマクロンなしで路線名はマクロン付きという違いが生じているのかという点も不可解なところではありますが、はてさて。