「SHIROBAKO展」に行ってきた
埼玉県川口市で行われているSHIROBAKO展 ~SHIROBAKOで学ぶアニメのつくり方~(www.skipcity.jp
)に行ってきました。『SHIROBAKO』の作品そのものも、劇場版を公開初日に観に行った程度には好きなのですが、この作品の題材上「アニメ制作」に関する展示があることに期待しての訪問です。
会場のある「SKIPシティ」の敷地は地図で見る(www.google.com
)とお椀型の変わった形状をしているのですが、これはかつてNHKラジオ放送所があり、巨大な鉄塔が建っていた名残のようです。
さて、「SHIROBAKO展」は映像ミュージアムの企画展という位置づけで、チケットは常設展(www.skipcity.jp
)と共用なのですが、その常設展示がまた面白い。映画やTVなど「映像」をテーマにした展示なのですが、フィルム時代の映写機は内部の構造が分かるようになっていたり、スタジオ撮影を体験できるコーナーがあったりするなど、子供も大人も楽しめる作りになっています。展示物も歴史的なものだけではなく、最近の作品、例えば2017年の映画『カメラを止めるな!』までありました[1]。個人的には、「企画・演出」コーナーにあった『ゴジラvsモスラ』に関する資料のうち、本編には採用されなかった「モスラに卵を産みつけられたゴジラ」や「サソリ怪獣」の設定イラストに釘付けになりました。こんなマニアックな設定資料がなぜここに展示されているのかとw
常設展を抜けるといよいよ「SHIROBAKO展」です。キャラクターデザインや作中で使用された原画が壁に展示されているのは他のアニメ作品の展示会でもお馴染みの光景ですが、「SHIROBAKO展」ならではの特徴も見られました。
アニメ制作は大まかに言っても 脚本 → キャラデザ → 絵コンテ → 原画 → 動画 → 撮影 → アフレコ という工程があり、そこに背景美術や3DCGなどが複雑に絡み合ってゆくのですが、それぞれのコーナーにそのフロー図が掲示されており、「この展示物は全体の流れの中でここに当たる」ということが分かりやすくなっていたのは良い工夫だと思いました。
他にもタブレット機器を活用して彩色やアフレコ体験ができるようになっており、そういった展示コーナーは動画撮影も可能になっている[2]のが今の世情を反映していて素晴らしいですね。これは体験している様子がSNSに投稿されること狙った施策だと思いますが、アニメ業界へ入ることを目指している人たちがここで体験したことを記録し、自宅で復習するのに活用するといったこともできそうです。
一方で、それぞれのコーナーでの展示内容には浅さが否めませんでした。例えば原画であれば「第一原画」と「第二原画」の違いや作画修正における着眼点[3]といった情報が欲しいところです。修正前と修正後の原画を並べて修正箇所を比較できるような展示形態なら良かったのにと思いました。
また、個人的にはアニメ制作の後半部分にある「撮影」処理について具体的なイメージが湧いていません。昔のセルアニメ時代は背景にセルを重ねて文字通りカメラで撮影していたというのは分かるのですが、現在のデジタル作画における「撮影」がどのような処理をしているのかが分かる展示であることを期待して訪問した部分もあります。しかし「撮影」のコーナーは「SHIROBAKO展」の中でいちばん簡素なもので、実物の展示は一切無く簡単な解説パネルがあるのみでした。その解説内容も、「スケジュールが崩れた際のしわ寄せを一番受ける」「撮影は待つのが仕事だからね」といった感じで、肝心の内容については深く触れられていないものだったのは残念です。それだけ「撮影」に関する内容を業界外の人に説明するのは難しいということなのかもしれませんが、そこはもう少し頑張って欲しかったなあと。
やはりその辺は、あくまで『SHIROBAKO』という「アニメ作品」の展示会の枠を抜け切れておらず、「アニメ制作」の展示を期待していくところではないというのが正直な感想です。会場のアクセスのし辛さや展示規模からしても、既存の『SHIROBAKO』ファン向けの展示会というように思えました。もっとも常設展示が充実していたので、それも鑑みて総合的に評価すると、『SHIROBAKO』を一度以上見ており、かつアニメ制作や映像そのものに興味がある人なら行ってみてもよいかもしれません。