サンデー文化祭2025に参加して思ったこと

本日10月12日から明日まで開催中のサンデー文化祭(websunday.net)に参加してきました。コロナ渦におけるオンライン開催(2021年3月)と抽選による限定開催(2024年9月)を経て、今年は展示エリアは事前予約の必要なく誰でも参加できるイベントとなりました。

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岩波神保町ビル前のレンガ広場に掲出されたイベントキービジュアルと会場マップオリジナル画像

私はこの文化祭イベントに参加するのは初めてなのですが、実際に参加してみての、特定の展示や作品に関するものではない全体的な感想を記します。

前提として私は週刊少年サンデーの今の連載作品を多くは知らず、1990年代から名前を存じ上げている一部のレジェンドの方々のものしか読んでいません。それでも発行元である小学館のイベントとして、作品より作家に焦点を当てた展示は興味深く、作品メインのいわゆる「○○展」とはまた違った感触を味わうことができ、全体的には満足でした。サンデーが毎週作られている小学館本社で行われるという事実だけでも空間的に素晴らしいことですし。

そのような前提のもと、イベント運営的にはいくつかの要改善点や不備も感じられました。今回のイベントはおそらく小学館の編集部が主導したものであり、彼らは決してイベント開催のプロではないところも、不備が目に付いた理由のひとつではないかと推測します。無料で開催いただけたイベントに対し文句を言うのもどうかと思いますし、何か具体的に損失を被ったわけではないのですし、そもそも「文化祭」に対してお客様目線を持つべきではないのですが、しかし参加者として意見を発信することは重要ですし、なによりそういう率直な意見を求めている雰囲気も察したので思ったところを書いてみることにします。

このような理由が強いのでこの記事は自分自身の備忘録や参加者同士の共感を意図したものではなく、どちらかといえば運営に向けたメッセージとなります。直接問い合わせするほどではないけれど、なにかのきっかけで伝わったらいいなくらいの空気感です。前半は良かった点や純粋な要望を記し、後半につれて批判色が濃くなりますので、ネガティブな意見を見たくない方は途中で読むのをやめてください(笑)。

編集者の顔を知りたい

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スタッフの中にはわざわざ「編集部」の名札を下げた方もいらっしゃいました。公式アカウントがこういう投稿(X)をされているくらいですから、たぶん積極的に話し掛けて良いものだったと思うのですが、実際はなかなか難しいですよね。

これは外部の人間の思いつきに過ぎないのですが、名札に担当作品名を明記すれば参加者から話し掛けるきっかけにもなったのではないでしょうか。まあ超人気作品だと群がられて困るとかあるかもしれませんが。読者としては作家に対してだけでなく、編集者に対しても伝えたいこといろいろありますよ。本誌のアオリ、ヒキに対する感想とか。せっかく本社で開催するイベントなのですから、そういうのいかがでしょうか。

会場内外の混雑

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首都圏開催で会期も短い漫画やアニメ系のイベントは、入場だけで何時間も並び、会場内も人に揉まれながらの観覧が当たり前の状況になってしまっています。なので今回もそういう覚悟をしていたのですが、私の行った12日午後に関して言えばコラボカフェと大嶋編集長のガラポン企画(X)を除けばまったくそういうことはなく、受付での記名が必要な本社ビルへの入場も含めてスムーズに観覧できました。

混雑するわけではなく逆に閑古鳥が鳴く状況でもないちょうどいい具合で、去年までの抽選制はなんだったのかと拍子抜けするほど。それとも我々の見えないところで(会場広さなど)運営側が検証と努力をされた結果なのでしょうか。

展示物に対する個別ルール

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写真撮影の可否は比較的案内が行き届いていたのですが、手に触れて良いかの区別が全体的に分かりにくかったです。いくつかの展示物は直接触れて体験できるものだったのに対し、ショーケースに収められていない裸の展示物でも触れるどころか近づくことすら禁止のものもあり、その区別が知覚しづらい状況でした。

小さな注意文を最後まで読まないと判断できない展示がいくつかあったので、これは次回以降改善して欲しいところです。

物販の発表タイミングと締め切り

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今回は会場で物販があったのですが、事前抽選の始まった段階では一部の商品しか告知されておらず、販売品の全容が分かった時点ではすでに申し込みが締め切られていました(会期の3週間ほど前にあたる9月22日に最後の抽選申し込みが終了)。私個人としてはそれほどグッズに執着はないのであまり思うところはないのですが、必要な情報が開示されない段階での締め切りに不満を抱いた方は多かったのではないでしょうか。

開催当日より通販が開始され、購入特典は通販にも付く(=会場限定特典は存在しない)ので、実際のどころ大きな問題はないとはいえ、これは改善を要する点ではないかと思いました。

当日の情報取得の厳しさ(特定プラットフォームへのアカウント登録が事実上必須なことに対する警鐘)

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冒頭にリンクを張ったように、週刊少年サンデーの Web サイト内にイベント公式ページ(websunday.net)が用意されており、Q&A(websunday.net)もよくまとまっています。

一方で細かなエピソードや当日その場になってみないと分からない情報の発信は基本的に公式 X アカウント(X)で行われています。このように公式サイトの更新頻度を落とし、速報は SNS を活用する方式はもう10年以上、サンデー文化祭に限らず多くのイベントでの標準的なやり方となっているのですが、これが X にログインする習慣のない私にとっては厳しいのです……。

アカウントを持っていない人やこまめにログアウトしている人ならご存じのように X は2023年7月以降、ログインをしていない状況では一部のツイートしか見られない改変が行われています。そういう閉じたプラットフォームのみで公式の発信をするのは良い方針とは思えません。実際に開催初日の夜である10月12日19:30現在、ログインしていない状態で公式アカウントを見ると10:00のイベント開幕を知らせる固定ツイート1件のほかは以前に投稿された描き下ろしイラストに関する投稿ばかりが上位に並び、当日何が起こっていたかを知ることがほとんど不可能な状況です。

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少年サンデー公式 X を非ログイン状態で閲覧した様子(冒頭3件のスクショ)オリジナル画像

とくに今回は台風接近による開催中止の可能性も告知されており(結果的に杞憂に終わりましたが)、遠方からの来場者は最新情報が速やかに取得できないと困る事態にあったでしょう。

小学館は発行書籍に対するアクセシビリティには力を入れており、2024年度のアクセシビリティへの取り組みについて(www.shogakukan.co.jp)のリリースでは「一人でも多くの方にコンテンツを届ける」とのアピールが成されています。今回の展示エリアにも「アクセシブル・ブックス」のコーナーがあったほどで、その意識は素晴らしいことなのですが、であればこそ Web による情報発信でもアクセシビリティに気を遣って欲しいところです。X にログインしている人とそうでない人とで取得できる情報量に差が出てしまうのはアクセシブルとはいえません。

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「誰もが読書を楽しめる 小学館のアクセシブル・ブックス」の展示コーナーオリジナル画像

規約上アカウントを作れない12歳未満の人、iPhone ユーザーでアプリ(apps.apple.com)のレーティング「16+」に引っ掛かる人、思想上の理由でアカウントを作りたくない人、アカウント凍結されてしまった人などさまざまな状況がある中で、公式の情報というものはアカウントを作らずとも(ログインせずとも)閲覧可能なオープンな場所で告知されるべきです。とくに前者2つの条件は少年サンデーのイベントなのに、その本来の対象であろう小中学生に対して、Web 上で最新の公式情報を知りたいだけのことで不便を生じるのはおかしなことだと思います。

X で発信をするなと言っているわけではありません。X のみでの発信は組織としておかしいことだという批判です。今の時代 SNS は X だけじゃないですよね。1つに固着する理由はあるのでしょうか。2023年7月以前とそれ以降では状況が変わっていることにまず気付いて欲しいです。