立山カルデラ砂防体験学習会(2017年度)に参加
2017年9月に立山カルデラ砂防体験学習会(www.tatecal.or.jp
)のトロッコ個人コースに当選したので行ってきました。
この体験会、立山の砂防軌道に乗れる機会とあって昔から気になっていたのですが、実施が夏期の平日のみでそもそも都合を付けにくいところ、抽選に外れたり、申し込みの締め切り日を忘れていたりで、2017年度になってようやく参加することができました。
黒部アルペンルートで富山入り
せっかくなので、これまた今まで通ったことのなかった黒部アルペンルートを使って富山入りすることにしました。
長野側の入口である扇沢までは、新宿からアルピコ交通の夜行バス(www.alpico.co.jp
)が運行されています(冬季運休)。値段はオンライン決済で6,100円(運賃 ¥4,850 + 深夜割増 ¥1,350 - Web割引 ¥100)。
発車はバスタ新宿ではなく、ベンチすらない新宿西口・臨時26番からで、なおかつ4列シート車なのが残念でしたが、夏休みの終わった平日ということもあってか二人分のシートを独占でき、さらに乗客全員が扇沢までの利用だったので途中停留所は通過し事実上の直行便となり、終点まで快適に過ごすことができました。
9月12日(火)、扇沢の到着はほぼ定刻の5時半頃。予報通り土砂降りの雨模様で気温も低く、さっそく上着を羽織ります。
ここからは関電トンネルトロリーバスに乗車。トロリーバスは以前上海に行ったときに走っているのを見たことはありますが、実物に乗るのはこれが初めてです。
外観や内装は普通のバスそのものですが、ひとたび動き出すとVVVFインバータの制御音が聞こえてまるで電車に乗っているよう、いや正式には鉄道車両(無軌条電車)なのでまさに電車に乗っているのですが。
黒部ダム駅到着後、展望台のレストランで朝食を摂り、しばしダム周辺を散策。黒四ダム、『プロジェクトX』などのTV番組などでしか見たことがありませんでしたが、間近で実物を見るとものすごいものですね。堤体の巨大さはもちろんですが、両岸を固めたコンクリートの無骨さにしばし見とれてしまいました。
その後は、ケーブルカー → ロープウェイ → トロリーバス → 高原バス → ケーブルカーを乗り継いで立山駅まで向かいます。本来ならのんびり山歩きとまでは行かずとも、途中のいくつかの駅に併設された展望台で雄大な景色を眺められるのでしょうけど、この日は終日雨模様かつ霧が出ていてそんなことも叶わず、ひたすら乗り物を楽しむ旅となりました(=いつも通り)。
黒四ダム以外、途中の観光をまったくしなかったため、立山駅には昼過ぎに到着。明日の集合場所はここなのですが、ホテルは富山駅近くのところを取っているのでさらに富山地方鉄道に乗り、市内へ向かいました。
立山カルデラ砂防体験学習会
9月13日(水)、体験会当日です。前日の雨とは打って変わっての好天候。
トロッココースは2班に分かれての行動となりますが、私が割り当てられた第1班(行きはバス、帰りはトロッコ)の行程表はこんな感じ。
時間 | 内容 |
---|---|
8:30〜8:40 | 受付(バス乗車まで博物館見学) |
9:05 | バス乗車 |
9:55 | 有峰記念館 |
10:28 | 跡津川断層(真川大露頭) |
10:40 | カルデラゲート |
10:55 | 六九谷展望台 |
11:15 | 多枝原展望台 |
11:30〜12:20 | 立山温泉跡地(どじょう池、浴槽跡)【昼食】 |
12:37 | カルデラゲート |
12:45 | 白岩堰堤(国指定重要文化財) |
13:05 | 生涯の湯(足湯) |
13:30 | 白岩右岸部岩盤対策工 |
14:05 | 水谷平 |
14:35〜16:20 | トロッコ乗車 |
16:20 | 立山砂防事務所 |
16:25 | 博物館【解散】 |
- 主な見学地(地図)(
drive.google.com
)
博物館前で受付を行い、2Fの「カルデラ展示室」(有料ゾーン)を見学した後、バスへ乗車。
立山大橋や有峰林道(小見線)を通り、有峰記念館脇で休憩の後(記念館自体の見学はなし)、折立ゲートからいよいよ一般車両通行不可のエリアへ。
車内から跡津川断層真川大露頭を見学し、有峰トンネルを抜けたら六九谷展望台へ。
写真中央に見える盛り上がった場所が多枝原平で、左側に地質の異なる2つの崩壊跡(土色と灰色)が見えますが、その右側も崩壊跡だそうで、現在は山腹工事で緑化が進んでいるため説明を受けるまで気付きませんでした。
続いて多枝原展望台で鳶山崩れの崩壊跡を見学した後、立山温泉跡で昼食休憩。
再びバスで有峰トンネルを経由して、白岩堰堤へ。
白岩堰堤では管理橋(緑色の鉄橋)の上から本堤を見下ろすことができました。ちなみに左岸部のすぐ近くにはインクラインが通っていますが、木々に阻まれ実物を目視することはできず。
さらに右岸部の岩盤補強としてトンネル内から打ち込まれたアンカーボルトの様子を見学しました。
トンネル内写真の左側に多数のアンカーボルトが打ち込まれていますが、これが地中で白岩堰堤の右岸部まで延びており、岩盤を内側から支えているようです。地表を安定させる方法としてこんな工法があるとは、想像もしていませんでした。
その後、トロッコ用に作られたと思われる白岩トンネルを徒歩で抜け水谷平へ移動します。
トロッコの発車時間まで30分ほどあったので、それまでの間は自由時間。とはいえ、線路内や集落への立ち入りは厳禁で、駅舎前の広場をうろうろできる程度。しかしその間にも資材列車が1本到着し、荷物の積み卸し風景を見ることができました。
資材列車の積み卸しが終わった後、側線で待機していた人車の編成が入換を開始。我々体験学習会の参加者と数人の現場作業者が乗り込んだトロッコ列車は、予定より早めの14時20分過ぎに発車。発車してすぐに白岩堰堤の全景が見られるポイントで特別に数分間停車。
その後は有名な18段スイッチバックを通過し、終点の千寿ヶ原まで1時間45分ほどかけて降りてきます。最後に博物館でヘルメット等を返却して解散。
丸一日掛けてバスとトロッコで移動しつつ「砂防体験学習」を行ったわけですが、白岩右岸部岩盤対策工をはじめとして目に見えないところでも多数の工事が行われていることがよく分かりました。実は以前にも「立山カルデラ砂防博物館」には訪問したことがありましたが、現場で巨大な実物を目の当たりにすると、その感じ方は段違いですね。
また、展望台に登ったときに「(観光客が期待するような)雄大なカルデラの景色ではないとガッカリするかもしれませんが、これまでの工事で植生が回復した結果です」という旨のことを解説員の方が仰っていたのですが、確かにその通りで、配布されたガイドブックに掲載されたやや昔の写真と比較してもだいぶ様相が変わっている箇所も多く、そのほとんどが写真映えという意味では昔の方が良かったのも事実です。しかしカルデラっぽくない、つまらない風景に変化していくということは砂防事業が順調に進んでいる証なのかもしれませんね。