『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』の感想と公開記念舞台挨拶
昨日(6月27日)に公開された映画『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』(lupinthe3rd.com
)ですが、新宿・バルト9 で行われた公開記念舞台挨拶に当選したので初日は我慢して今日観てきました。
アニメ版『ルパン三世』は子供の頃に旧シリーズと新シリーズを夕方の再放送枠で毎日(毎週?)観ていた世代。そして近年の TV スペシャルに不満を感じていた(観ても記憶に残りすらしない)ところ、2014年の『次元大介の墓標』ではようやく自分の観たかった『ルパン』に出会えたことで、映画館に通い、Blu-ray も購入するなど久々にアツくなった記憶があります。公開当時、公式のキャッチコピーでは「原点回帰」を謳っていましたが、あくまで原作漫画や旧ルパン初期の雰囲気を踏襲するに留め、安易なセルフパロディに走らない姿勢にも好感が持てた次第です。当時の感想を読み返すと、主演声優の演技も絶賛していますね。声優といえば公開後の舞台挨拶で小林清志さんのお姿を拝見できたのもよい思い出です。
『不死身の血族』の感想
『次元大介の墓標』は作品全体の雰囲気、キャラクターデザイン、音楽、そして声優の演技を含めてひじょうに自分好みであり、これは続く『血煙の石川五ェ門』、『峰不二子の嘘』、そしてつい先日配信された『銭形と2人のルパン』も同様でした。
というわけで同じシリーズである本作劇場版にも高い期待を持って望んだ次第です。ですが、結論からいえば手放しで絶賛はできないと思ったのが正直な感想です。
以下、自分なりに良かった点、微妙だった点をまとめます。なお今の時点でインタビューは劇場パンフレットを含めて一切読んでいません。純粋に映像作品のみを観た感想となります。
- 以下ネタバレ全開なのでご注意ください。
設定の違和感
なにより、ICPO まわりの設定にブレがあるのが気になりました。
『血煙』の時点で銭形は上層部から手を引くよう命令される一方、『銭形と2人のルパン』のラストでは飛行機の手配をすんなり受け入れられています。かと思いきや、本作ではまた一転して支援を拒否されるという。なにか見逃している点があるのではないかと本作を観る前に『血煙』と『銭形と2人のルパン』を見返したものの、やはり分かりませんでした。
またホークの切り落とされた腕についても違和感があったのですが、それは後述します。
作画の違和感
『LUPIN THE IIIRD』シリーズはそもそも TV アニメとはキャラクターデザインが大きく異なるだけでなく、コミカルな表情をほとんどしない特徴があります。作画も全体的に安定しており、キャラクターの格好良さやクールさが作画を理由に台無しになることもなかったのですが、本作では表情が崩れたカットがところどころあったのが気になりました。セリフと作画でキャラ設定が合っていない的な。
これが単に作業期間上やむを得なかった結果なのか、それとも映画として公開される作品ということで OVA とは意図的に変えているのかは判断付きません。中盤に1カットだけ、モンキー・パンチ先生の原作漫画を思わせるカットがあった気がするのですが、一瞬のことだったので気のせいかもしれません。
ともかく初見で違和感を覚えたのは事実。何度か観れば自分なりに納得するかもしれないし、しないかもしれません。
マモーの小物感
マモーの描かれ方もやや不満があります。言うまでもなく、彼はアニメ版ルパンの宿敵としてはもっとも魅力的なキャラクターの一人なのですが、本作ではルパンに翻弄されている描写ばかりで残念な感じ。
とはいえこのように表現するしかないのかもしれません。直接対決するわけではないし、本作が『ルパンVS複製人間』の前日談(?)の扱いなのだとしたら、そこへ繋げるためには関係性が大きく変わるようなことはできないわけですからね。
だとしても、もうちょっと余裕を持った感じにできなかったのでしょうか。
ヤエル奥崎とホーク
本作ではヤエル奥崎とホークがふたたびルパン一味の前に立ちはだかります。
まずヤエル奥崎については、登場シーンが思ったより多かったこともあり全体的には満足なのですが、1点だけ次元との対決を一度はキッチリさせて欲しかったなと。そうするとたぶん次元が負けてしまうでしょうけれど、それでもいいのです。再戦なるかと期待させておいて、あのような邪魔の入り方は納得いかなかったです。ていうかあの弓使い、誰?
ホークは……月並みの感想ですけど、出番あれだけとは。「バミューダの亡霊」とも呼ばれた男がまさか崖から落ちただけで死ぬとは思わず、最終バトル前に復帰してヤエル奥崎と共闘するアツい展開を予想していたのにまさかのそれっきり。
しかも『血煙』で切り落とされた腕が『嘘』では何事もなかったように無傷で描かれていたのに、本作でふたたび片腕姿だったのはなんなのでしょうか。「LUPIN THE THIRD」2020展で展示された絵コンテを元にした私の個人的な解釈では、『嘘』で登場した無傷の方は「ホーク2号」だと考えていたのですが、この伏線回収されてないのでは。もやもやしたままですよ。(監督インタビューなどで補完されているのですかね?)
良かった点
残念に感じた点を書き連ねてきましたが、それもこれまでの『LUPIN THE IIIRD』シリーズにたいへん満足しており、期待がものすごく高かった故のこと。
逆に良かった点は以下のようなものが挙げられます。
- ルパンのジャケット、次元の帽子、銭形のコートといったお馴染みのトレードマークが今回は皆無だったにも関わらず、とくに違和感がなかった。キャラクターの芯がしっかり描かれているからこそ見た目に囚われない見方ができたのだと思う。
- ムオムはすべて良い。ともかく強すぎだし、生い立ちや異形な姿も納得。そして真の姿のスケールの大きさ。強さも敵としての魅力も間違いなくルパンシリーズ歴代最強。
- B'z の歌う主題歌はばっちしハマっていたし、サビの「見えないものを見ろ」も今回のルパンの戦い方そのものだった。
- エンドクレジット、みんな泣いたよね。本編が感動で泣くタイプのストーリーでないことは分かりきっていたので、ハンカチも持たずに油断していた。
公開記念舞台挨拶
冒頭に記したように、公開記念舞台挨拶(info.toho.co.jp
)に行ってきました。バルト9 もすっかりご無沙汰で、足を運んだのはたぶん2021年の『劇場編集版かくしごと』舞台挨拶以来かな。
前半のトークパートは自分的には外れ回。キャストの方々の私生活に興味はないので、もっと作品に関する話をして欲しかったです。声優だけの登壇ならバラエティ的な内容もアリでしょうけれど、小池監督を呼んでおいてあのようなトークに終始するのは違うんじゃないかな……。最後の方でおまけ程度にムオムの裏話的なことを引き出してくれましたが、いうても本編を見れば分かることだしね。今回の司会を務めた浪川さんのことは声優として尊敬していますし、あのようないじられキャラは嫌いじゃないですが、こういう場ではきちんとプロの司会者を立てて欲しいと思いました。
一方で後半のフォトセッションで我々一般参加者にも撮影タイムが設けられたことや、くす玉によるパフォーマンスがあったのは良かったです。昨今、メディアが入る舞台挨拶はテキスト記事に留まらずダイジェスト映像も公開されることが多く、各メディアが少しずつ違うシーンを公開しているのでそれらを全部見れば自宅に居ながらにして大体の雰囲気が分かってしまいます。それはそれでありがたいことですし、報道・記録とはそうあるべきだとも思うのですが、現地に赴くモチベーションは低下してしまいますし、メディアの方々が撮影しているのを尻目に「観客のみなさんは撮影禁止」と言われることにもやもやした感情が残るのも事実です。単にトークを聞くだけでなく楽しい体験ができること、そして自分で写真を撮ることで将来的な記憶にも残りやすいこととして、このような配慮、企画を行ってくださったことには感謝したいです。