「デジタル庁創設に向けた準備サイト」がスクリプト無効で閲覧できない

デジタル庁創設に向けた準備サイト(www.digital.go.jp) なるものが立ち上がったようです。

が、スクリプト無効設定でアクセスすると残念なことに……。

スクリプト無効設定で www.digital.go.jp にアクセスした様子。真っ白で何も表示されていない。

サイトポリシー(www.digital.go.jp) の「閲覧環境について」を読むと、

当ウェブサイトでは、より快適にご利用いただくためJavaScriptを使用しています。ご使用のブラウザの設定においてJavaScriptが有効となっていない場合、正しく表示されない、又は操作できないことがありますので、ご了承ください。

サイトポリシー(www.digital.go.jp)

とあるので、これは設定ミスやサーバーのエラーでそうなっているのではなく、意図的な作りと思われます。ソースコードを見るに「Nuxt.js」を使い、レンダリングを JavaScript を使ってブラウザ側で行う設定にしているのでしょう。

2021年現在、ほとんどの人は JavaScript が有効な状態でネットサーフィンしていることから、スクリプト無効環境を考慮しなくても構わないという判断に至ったのだと思われます。

しかし、スクリプト無効環境でコンテンツが閲覧できないことには昔も今も問題があります。

  • スクリプト有効設定 = スクリプトが動く とは限らない(Cookie 無効環境下での Storage アクセス、ドメインをまたいだ通信ブロック設定、などなど[1]
  • Web サイトの閲覧方法はブラウザのみとは限らない(Googlebot は JavaScript を解釈するようになったが、他の bot もそうとは限らない)
  • 将来的な懸念(Flash が誕生からわずか25年で死んだように、 JavaScript の技術が恒久的なものである保証はない)

ということで、ご意見・ご要望フォーム(www.digital.go.jp) から以下の意見を送りました。昨夜2時頃に眠い目をこすりながら書いたものなので、だいぶ粗い文章でお見苦しいのですが、送ったままのメッセージを残しておきます。

こちらのサイトですが、すべてのページがスクリプト無効環境では真っ白で何もアクセスできません。

「閲覧環境について」https://www.digital.go.jp/site-policyのページを拝見しますと、「ご使用のブラウザの設定において JavaScript が有効となっていない場合、正しく表示されない、又は操作できないことがあります」とあるので、これは設定ミスなどで想定外のエラーが起こっているわけではなく、意図的なものと思われます。

それでは、どういった理由でスクリプト無効環境の利用者を排除しているのでしょうか。

2021年時点、ほとんどのユーザーはスクリプト有効の状態で Web を閲覧しており、またスクリプトを無効にしている一部のユーザーもブラウザ設定を変更するなどしてスクリプト有効の状態にするのは難しくないことから、ほとんどのユーザーには影響がないと判断されたのかもしれません。

しかし、将来的なことまで考慮されておりますでしょうか。

2000年代に Flash を使ったサイトが流行りましたが、この技術は2020年12月にサポートが終了し、2021年1月12日以降はブラウザで動かなくなりました。

これはすなわち、当時作られたサイトがそのまま残っていたとしても、あるいは消滅していても大抵は「Internet Archive」などのアーカイブサービスに保存されているものですが、いずれにせよ通常の閲覧方法ではコンテンツを閲覧することができなくなってしまったことを意味します。

同様に、現在(2021年) JavaScript が有効でないと見られないサイトが作られることで、現時点の閲覧者はそれほど困らないとしても、10年後、100年後の将来に2021年時点のコンテンツを(アーカイブサービスを利用するなどして)調べようとしたときに、 JavaScript という技術が存在している保証はありません。

歴史的な調査が困難になる可能性が考えられます。

情報をアナログな手段ではなくデジタルとして持つことは、それだけで圧倒的なアクセシビリティを確保できる面はありますが、一方で技術の使い方を間違えると Flash のような悲惨な未来にもなり得ます。

さて、このサイトは JavaScript の技術に全面的に依存しないといけないような性質なのでしょうか。

地図サービスやアクションゲームのように特定の操作方法に特化したものではなさそうに見えます。

文書や画像の提供が中心のサイトであれば、コンテンツを HTML に含める形で提供することで JavaScript 無効でもアクセス可能な状況にすることは容易なはずです。

やや技術的な話になりますが、ソースコードを見るに「Nuxt.js」のフレームワークを利用して作られているようです。

これは設定次第で JavaScript 無効でも閲覧できる形にする(具体的には Static Site Generation 方式を採用する)ことはそう難しくない(少なくとも 0 から作り直す必要はない)のではないかと思います。

もしも、スクリプト無効環境の利用者を排除する特別な意図があるのでなければ、上に記したようなことも踏まえたうえで、今を生きる人だけではなく、未来の人類も含めたアクセス手段の提供という面から、 JavaScript に依存することが本当に良い選択なのかご一考いただければ幸いです。

私は Web、ひいてはデジタルデータの価値というものは、今この瞬間だけではなく将来にわたってアクセスできることでこそ普遍的な価値を持つものと考えております。

Web コンテンツは HTML で配信すること、それこそがキャッチコピーにもある「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」ではないでしょうか。

2021年4月28日追記さっそくSSR 方式で解決を目指す(X) とのお言葉を頂きました。

脚注

  • 1.

    なお、これはあくまで一般論であり、「デジタル庁創設に向けた準備サイト」に限って言えば Cookie も使っていなければ別ドメインからのリソース取得もしていないのであまり心配はしていません。ただし、 Cookie の使用に関しては本ウェブサイトでは2021年4月27日現在、Cookieを使用しておりません。(www.digital.go.jp) と書かれているように、あくまで現時点では未使用に過ぎないとのことなので、将来的にこのような問題が発生する可能性は考えられます。 ↩ 戻る