久米田ファンの見た「漫画とデザイン展」

有楽町の「GOOD DESIGN Marunouchi」で行われている漫画とデザイン展(www.g-mark.org) に行ってきました。

コミックの装丁やロゴなどのデザインに関する小規模の展示会で、赤本(Wikipedia) 時代の歴史紹介から始まり、現代のコミックにおけるデザイン上の工夫を実物展示とともにパネルで解説されています。

「漫画とデザイン展」の入口付近の展示

本展示会の特徴は、一つは実物の本を手にとって体験できること、もう一つはデザインと言ってもカバーイラストに留まらず、最近は当たり前となった“オビ”との関連性、また本によっては中身も含めて総合的な観点からデザインを紹介していることです。

例えば『MONSTER』(浦沢直樹)では本の中にストーリーと直結したとある仕掛けが施されており、発売日に(事前情報を知らずに)手に取った読者はきっと新鮮な驚きを得たことでしょう。ページをめくる動作と紐付けた仕掛けは電子書籍では不可能なことであり、紙の本の特徴を最大限に活かした工夫には感心させられました。

さて、久米田ファンとしてこの展示を見て感じたことを。

まず展示そのものとしては「ディープな漫画デザイン」のコーナーに『さよなら絶望先生』の紹介があったことが注目点です。タイトルロゴのフォント(昭和モダン体)に関する紹介であり、カバーの紙の材質への言及はありませんでした。

「ディープな漫画デザイン」コーナーの展示パネル、右下に『絶望先生』の展示
『絶望先生』の展示部分、「昭和とモダンを横断する絶望書体」のキャッチコピーとともに第一集の表紙が掲載

次に個人的に注目したいのはオビに関するものです。出版社にとって単行本のオビはあくまで販促として本を売るための手段に過ぎない認識なのか、オビに関する体系的な情報は皆無です。本展示会の解説でも、漫画のオビがいつ頃登場したかという基礎的な情報すら不明とされています。公式の一次情報がないのですから調べようがないのでしょう。

本展示会では、昨今はオビの存在を意識して作品タイトルは上部に配置される例が多いこと、逆にあえて異なる構成にした例も紹介されているほか、オビの内容そのものの紹介例として直接販促にはならないネタ要素にまみれた『ポプテピピック』の事例が展示されていました。

『ポプテピピック』のオビに関する展示

久米田作品にオビが付いたのは、私が知る限りでは『かってに改蔵』の途中からですが、2002年の『育ってダーリン!!』新装版ではA巻で「ドラマ化!! 希望[1]」、B巻で「久米田康治絶賛!!!(注:自画自賛です…)」と、早くも本来の販促ではなくネタの意味合いが強いものになっていたことを思い返した次第です。

ほか、出口付近には「MdN」など漫画デザインに関する書籍が何冊か展示されていましたが、その中には「良いコミックデザイン」(2015年発売)も置かれていました。この本は『せっかち伯爵と時間どろぼう』『さよなら絶望先生』『かってに改蔵(新装版)』と、久米田漫画からは3作品もの装丁が紹介されています。

書籍展示コーナー

脚注

  • 1.

    「希望」は気付きにくい小さな文字。 ↩ 戻る