EGAKU -draw the song- 展 秋田会場に行ってきた
昨年(2023年)11月に東京・新宿マルイ本館で開催された EGAKU 展(web.archive.org
)ですが、秋田県の横手市増田まんが美術館での巡回が始まりました。
- 『EGAKU -draw the song-』展(
manga-museum.com
)
ここの美術館はこれまでにさまざまな作品、作家の展示会やトークショーが行われており[1]、いつか久米田先生の展示会も……と期待していたのですが、こういう形で実現するとは。
さて、展示会の地方巡回といえば多少の新規展示や当地品とのコラボが行われることはあれど、基本的な展示内容は変わらないことが多いのですが、本展示会はかなりのボリュームアップとなっており、東京会場へ行った方も遠征して損はない内容となっています。
旅程と費用
関東から秋田県への訪問に際し、今回使用したきっぷは JR 東日本の「週末パス」。8,880円で土休日のみ JR 東日本管内の南東北エリア以南が2日間乗り放題のフリーパスです。美術館の最寄駅である十文字駅はフリーエリア外なのですが、2駅手前の湯沢駅までは使えるため、乗り越し分(片道200円)を追加すれば往復が可能となります。
ただし、後述する理由により十文字駅からさらに3駅先の横手で宿泊することとしたため、かかった金額は以下のとおりとなりました(食費除く)。
- 週末パス: 8,880円
- 湯沢→横手(フリーエリア外の JR 運賃): 330円
- 宿泊費(横手ステーションホテル・シングルルームa): 3,800円
- 横手→十文字(フリーエリア外の JR 運賃): 240円
- 企画展観覧料金: 1,000円
- 増田蔵の駅→十文字駅前(羽後交通バス): 250円
- 十文字→湯沢(フリーエリア外の JR 運賃): 200円
- 仙台→品川(ひたち号特急券・チケットレス35%OFF): 1,880円
- 合計: 16,580円
素直に山形新幹線を使えば関東から日帰りも可能なのですが、1泊したうえで行程を工夫することにより特急料金を1,880円に抑えることができ、ホテル代を考えても日帰りより安く済むというわけです。
往路・まずは横手駅へ
往路は都内から東北線と奥羽線を乗り継ぎ普通列車のみでひたすら移動。土曜日なので通学で利用する学生の姿はほとんどなく、また青春18きっぷの期間外なのでとくに福島→米沢の越境区間においても旅行客も少なく、快適に移動できました。途中の福島や米沢で寄り道しつつ、横手駅には21:39着。
宿泊地を横手にしたのは、美術館最寄りの十文字駅周辺はホテルの選択肢が少ないという理由もありますが、横手駅構内で企画展の広告展開が行われているためです。
- 美術館の Instagram アカウントでは駅改札口側から西口方向を見た構図が紹介されていますが、逆方向から見ると自然なアイレベルを維持したまま天井の横型フラッグが2枚とも構図に収まるので、絵的により美しいかと思います。
改札口を出て左側(西口側)の東西自由通路(こころ~ど)に31枚のフラッグ広告が展開されており、それぞれのフラッグには今回の企画展に参加された作家の名前と使用した曲名が印字されています。久米田先生のものは改札口から見て右側壁(上記写真では左側)の10番目に配置。
撮影を終えてホテルに向かうため東口へ回ると、駅舎 1F にある観光案内所が入ったラウンジ内に本展示会のポスターが掲出されているのを発見。これは事前情報としてまったく知らなかったのでテンション上がります。
駅を出てロータリーすぐの横手ステーションホテルに。建物はだいぶ年季の入った古いものでロビーも薄暗く、インターネット検索ではサジェストで「横手ステーションホテル 幽霊」などと出てくるのがちょっと怖いところですが、部屋の清潔面はなんら問題なく、シングル3,000円台の格安ビジネスホテルとしてはまあこんなものではという感想。それでもあえて難点を挙げると、部屋に内線電話がなくフロントへの連絡ができないのと、TV はかなり古いタイプのようでアナログ放送時代のような映像乱れがあるのには笑いましたが、自分は基本的に旅先で TV を見ないので無問題です。
このホテルの入口にも展示会のポスターが貼られていたのと、ロビーの受付にフライヤーが置かれていたことで、かなり広範囲に広告展開が行われていることを確信。地方のイベントだと比較的こういうことがありますね。
横手から美術館へ
翌朝、少し早起きして 6:30 に横手駅へ。前夜とは違い、陽が上った明るい状態ではフラッグ広告の印象がまた異なるので、再び撮影を行います。これが大都市圏の駅だと通行人ゼロの状態を記録するのに始発や終電付近を狙うか、あるいは良いタイミングを何時間も粘る覚悟が必要ですが、ここは通行人もまばらでそういった苦労とは縁遠く撮影は一瞬で終了。
西口の国道沿いにある吉野家で朝食を摂り、7:30 発の湯沢行き列車で美術館に向かいます。最寄りの十文字駅で降り、本来ならば路線バス(ugokotsu.co.jp
)を利用したいところですが、ただでさえ本数が少ないところ土日は運休便が多く、駅前を 10:14 発に出発する便まで2時間半も空いています。実質タクシーか徒歩しかない状況ですが、時間には余裕があり天候も良かったため、散策を兼ねて徒歩で向かいます。
街道を40分ほど歩き、8:25 頃に増田町の中心街(中七日町通り)へ到着。ここは昔ながらの蔵の街が残っており、一部は観光名所として内部見学もできるようですが、この時間はまだ開いておらず、外観だけを眺めて楽しみます。
通り沿いのいくつかの建物では、観光名所の蔵を含めごく普通の飲食店や電器屋、商工会にも展示会のポスターが掲出されていました。おそらく中七日町通りだけで20枚くらいはあるのではないでしょうか。街の商店街に久米田先生関連のポスターが多数掲出されている光景は2017年の久米田康治のかくしごと展の時を思い起こします。
中七日町通りから5分ほどの場所にある美術館には、建物正面に今回の展示会イラストを使用したバナーが掲げられていたほか、広い駐車場の周囲には横手駅にあったのと同じフラッグが分散して掲出されていました。久米田先生のものは正面向かって左手のもっとも中央寄りという比較的良い位置です。
企画展
10:00 の開館と同時に入場。施設自体への入場は無料で、企画展の入場者のみ有料チケットを購入する形です。東京会場では携帯電話、スマートフォン、タブレットでのみ撮影可という最近よく見られるルールでしたが、ここは機材の制約はなく、展示の記録に適したレンズを使用してしっかりとした記録を残すことができます。
展示の内容は冒頭にも記したように東京会場から大きく進化しており、というか東京会場がコンパクトすぎたというか……ともかくバージョンアップというより、もはや同じ素材を利用しただけの別イベントと言っても過言ではないほどの進化ぶりでした。
まず入場口すぐの空間では、参加作家が描かれたイラストを音楽のジャケットのように CD ケースに入れた展示があります。ここは建物の都合上、余分な空間を利用しただけのものと思われ、そこから先のエリア(コンベンションホールを利用したスペース)が本来の展示コーナーとなります。
企画にあたっての主催者あいさつに続いて、参加作家数人ごとに複数の小エリアに区切られて描き下ろしイラストとコメント、撮影秘話、そして YouTube アカウントでも公開されている動画をエンドレスで流したディスプレイが配置というのが基本的な構成です。
久米田先生のイラストは入ってすぐの ROOM #1 に相原実貴、依田瑞稀、山崎かのり、久米田康治、たらちねジョン、ためこうのグループで展示。
展示エリアの中央ではそれぞれの作家が描かれたイラストを使用した正方形のタペストリーが天井から吊り下げられており、天井の高さを利用した迫力ある展示となっていました。一方、その手前には作画中の様子などを映した多数のプリント写真が吊り下げられており、これは東京会場にもあったものですが、天井の高さが災いして下端でもかなりの高さがあり、肝心の写真がほとんど見えない状態なのは残念でした。東京会場では下端は目線より少し高い程度の位置であり、コンパクトな会場においては良い展示方法だったのですが……。
この脇では小さなディスプレイで作画のタイムラプス動画が流れています。作家によってはかなり長い動画となっていますが、久米田先生の動画は一筆書き背景の作画部分を高速編集したものでほんの数秒。おそらくドローイング動画の 3:35~3:40 部分を抜き出したものではないかと思います。
また、少し先のエリアには本会場ならではの展示として、イラストに使用した歌詞の一部分を直筆で書いた紙が展示されていました。ただこれはなんの説明もなく、どういった趣旨の展示なのか理解できません。歌詞の中でその作家がとくにどの部分に注目したのかを表す意味合いがあるのか(だとしたらそれはイラスト脇で説明されて然るべきでしょう)、それとも単に推し作家の直筆文字を見てファンが萌えることを想定しているのでしょうか。参加作家はあくまで漫画家やイラストレーターであり、絵に関してはプロでも文字は単体の作品として成り立つレベルとは限らないため、これを作家に書かせて展示する意味合いは一体なんだろうと疑問が残りました。
展示エリアの最後には色紙コーナー。これは東京会場にもありましたが、ここのみは撮影禁止のため現地で目に焼き付けておきたいところ。久米田先生の色紙は可久士、姫、羽美、改蔵、地丹、望、可符香、うろペン、逸子と 8+1 人ものキャラクターが描かれているもので、可符香ちゃんは連載時とは少し異なり『シブヤニアファミリー』にひょっこり出演しそうな表情、羽美ちゃんは『スタジオスタジオパルプ』最終話のように祈りのポーズをしているのが印象的です。色紙の中央にはタマにはオシャレ扱いされてもいいじゃない。
という久米田先生らしいコメントが入っていますが、作品も、ご本人もいつもオシャレな貴方がそれを言いますか!!
常設展
10:00 に入場して企画展を退出したのが 10:55。帰りは最寄りの停留所を 11:34 に出発するバスに乗らなければならないのであまり余裕はありませんが、駆け足で常設展を鑑賞します(併設のカフェでコラボメニューの展開もありましたがそれは諦め)。
ここの美術館は時代やジャンルを問わずさまざまな漫画の資料を保存、展示されており、名台詞ロード(manga-museum.com
)には『葬送のフリーレン』のセリフまであったので、それなりの頻度で差し替えが行われているのでしょう。
久米田作品に関する展示はありませんでしたが、2F にあるマンガライブラリー(図書室)(manga-museum.com
)には『さよなら絶望先生』の単行本全30巻と「絶望読本」が置かれているのを確認しました[2]。
脚注
- 1.
-
2.
横手市増田まんが美術館の Instagram 投稿(7月13日12:47)によると、『絶望先生』を含めた展示作家の専用コーナーが展開中とのこと。私が訪問したときはなかったはずなので、期間途中からの実施なのでしょうね。 ↩ 戻る