シャフト50周年展 『さよなら絶望先生』の展示資料考察

シャフト50周年展の『かってに改蔵』映像に涙した話で展示会全体の訪問記を書いたのですが、その中でも『さよなら絶望先生』コーナーの展示資料について深く見てゆきたいと思います。

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『さよなら絶望先生』のパネル。写真は展示会開幕のプレスリリース(prtimes.jp)より。©シャフト50周年展製作委員会オリジナル画像

前記事で記したように、展示資料は以下のとおりです。

  • 各シリーズのキービジュアル 4枚(1期、2期、2.5期、3期)
  • オープニング原画、レイアウト 32枚(各期8枚ずつ)
  • 小型ディスプレイによる映像 4個(1期、2期、3期、2.5期&3.5期)
  • 表情・全身イラスト 3枚(糸色望、風浦可符香、木津千里)
  • アニメ場面写 21枚
  • スタッフのコメントパネル 4枚(尾石達也、宮本幸裕、山村洋貴、劇団イヌカレー(泥犬))

このうち本記事では原画、レイアウトに注目してみてゆきます。『さよなら絶望先生』の中間成果物が展示されたイベントはこれまでにも複数回存在したのですが、今回の特徴は各期のオープニングのみに絞ったこと、それぞれ小型ディスプレイが設置されており完成映像と比較ができるようになっていることです。

1期『さよなら絶望先生』

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今回の展示8枚のうち5枚は、中盤以降の望が爆走するシーンが選定されています。

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『さよなら絶望先生』の原画配置(第4話DVD版の映像を用いて擬似的に再現)オリジナル画像
展示位置 タイムスタンプ 種別 番号 描写 MG展示
1枚目 0′45″ 原画 A1 左手で頭を抑えながら苦悩の表情をする望 なし
2枚目 0′59″〜1′02″ 原画 A1 爆走する望 なし
3枚目 0′59″〜1′02″ 原画 A7 爆走する望 あり
4枚目 0′20″〜0′21″ 原画 A1 縄で吊されている千里(駿河問い) あり
5枚目 1′15″〜1′20″ レイアウト C57 妊娠八ヶ月の可符香 あり
6枚目 0′59″〜1′02″ 原画 A10 爆走する望 あり
7枚目 0′59″〜1′02″ 原画 A11 爆走する望 あり
8枚目 0′59″〜1′02″ 原画 A12 爆走する望 あり

1期のオープニングは「MADOGATARI展」(2015年〜2016年)と「Mixa Animation Diary Plus『さよなら絶望先生』展示会」(2024年)でも展示があったのですが、後者は首を吊るシーンが中心だったのでそのときの展示物との重複はない一方、前者とはかなり重複が見られました。オープニングの中でもとくに動きの激しいシーンは“爆走”と“首吊り”のみですから、重複はやむを得ないでしょう。

ところでMADOGATARI展での爆走シーンは、途中抜けがあるものの連続したカットが展示されていました。動きのあるシーンを連続した原画で見せることで、場合によっては静止画で見れば崩れた画であっても動きのある画としてはそれが正解である(決して作画崩壊ではない)ことがよく伝わった展示でした。

それに引き換え今回は連続しているのはA10〜A12の3枚のみで、しかもA7とA10の間にまったく別シーンの画が差し挟まれている状況でした。おそらく多くの観覧者はこの配置に違和感を持ったのではないでしょうか。しかし原画の選定基準を想像すると、これは意味のある配置なことが分かります。

完成映像を見れば分かることですが、この爆走シーンにおいて望は腕を5回振っています。それを表現するにあたり同じ原画を5回使い回しているかと思いきや、実は4回目のみつまずきよろめく動作が差し挟まっています。そしてその箇所こそが今回の展示で唯一連続しているA10〜A12のカットなのです。

『さよなら絶望先生』オープニング映像で望が爆走するシーン(0′59″〜)(YouTube)

百見様には周知のことでも、一見様でこれに気付いた人は多くはないでしょう。そこであえて原画配置に違和感を持たせることでA10〜A12のカットに観客を注目させ、さらに脇に設置された小型ディスプレイで完成映像を流すことでその答え合わせができるようにしたとは考えられないでしょうか。個人的な想像に過ぎないのですが、3千円近い入場料を払ってまで展示会に来るマニアに対するシャフトからのさりげない配慮だと思った次第です。いや高度すぎん?

2期『【俗・】さよなら絶望先生』

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ほかと異なり、唯一縦型に配置されています。

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『【俗・】さよなら絶望先生』の原画配置(第3話DVD版の映像を用いて擬似的に再現)オリジナル画像
展示位置 タイムスタンプ 種別 番号 描写 MG展示
1枚目 0′47″〜0′53″ 原画 A2/C5 制帽姿の望が仮面を外す なし
2枚目 0′47″〜0′53″ 原画 A3/C6 制帽姿の望が仮面を外す なし
3枚目 0′47″〜0′53″ 原画 A4 制帽姿の望が仮面を外す なし
4枚目 0′47″〜0′53″ 原画 制帽姿の望が仮面を外す なし
5枚目 1′04″〜1′14″ 原画 A1 落下しながら抱き合う望とまとい なし
6枚目 1′16″〜1′17″ レイアウト C51 (A1/B1) 正面を向いた可符香 なし
7枚目 1′04″〜1′14″ 原画 A24 落下しながら抱き合う望とまとい あり
8枚目 1′04″〜1′14″ 原画 A34 落下しながら抱き合う望とまとい あり

2期の原画を見て会場で目を見張った方も多いのではないかと思います。1枚目(左列最上段)のA2/C5のカット、原画では仮面越しに瞳の表現がされているではありませんか。

完成映像では瞳が描かれておらず、まるで『機動戦士ガンダム』のシャア・アズナブルが付けているマスクのような表現となっているのですが、原画段階では異なっていたとは18年越しに明らかになった真実でした。直後のA3/C6(仮面が取れる瞬間)では原画段階から望は瞳を閉じていますから、原画のまま絵を動かすと不自然になってしまいそうです。

ここの配置も1期と同じく不自然さがあります。望とまといが落下するシーンの途中に可符香の正面顔の画(レイアウト)が差し挟まっているのです。1期の配置は前述の意図を(勝手に)見出しているのですが、こちらの配置意図は掴めず。

3期『【懺・】さよなら絶望先生』

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MADOGATARI展では3期の原画展示はなかったので、シャフトイベントでの展示は今回が初めてとなります。すなわち8枚すべてが注目に値すると言えるのですが、選定のコンセプトは1期、2期と比べて明らかに異なり、「動きのあるシーンにおける連続したカットの展示」が存在しないことが分かります。

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『【懺・】さよなら絶望先生』の原画配置(第3話DVD版の映像を用いて擬似的に再現)オリジナル画像
展示位置 タイムスタンプ 種別 番号 描写 MG展示
1枚目 0′46″ 原画 雨の中不敵に笑う望 なし
2枚目 0′48″ 原画 A2 あびる なし
3枚目 0′48″ 原画 A3 カエレ なし
4枚目 0′48″〜0′49″ 原画 霧&まとい&奈美 なし
5枚目 0′49″ 原画 B2 晴美&千里 なし
6枚目 1′09″〜1′12″ 原画 A7 絶望少女8人が曲に合わせて首を傾ける なし
7枚目 1′12″ 原画 絶望少女8人が左手でLサインを掲げる なし
8枚目 1′23″〜1′24″ 原画 望に抱えられた可符香 なし

3期「林檎もぎれビーム!」の楽曲の爽快感はいわずもがなですが、映像表現でキャラクターの連続した動きに注目すると、可符香が宇宙で舞うシーンやその後落下するシーンは1期の爆走や2期の落下ほどインパクトのある評価には至れなかったと思います。そのためあえてそのシーンを外したか、あるいは同じコンセプトの展示が3連続になるのを避けた結果に過ぎないのかもしれません。

個人的には7枚目のLサインの次シーンで、右手で指差しジェスチャーを作る動きが面白いと思っているので、今後も機会があればぜひこれを並べて欲しいところです。コマ送りしないと気付かないレベルですが、右側(奈美)から順に同じ動きを追っていると思いきや、左から2番目(晴美)のみ動作がワンテンポ遅れているのですよね。『懺』の3話TV放送版からBlu-ray BOX記念盤に至るまで一貫しているので、作業ミスではなく意図した動きだと判断できるのですが、並べられた原画を見ることでその意図が理解できるといいなあと。

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絶望少女8人が右手で指差しジェスチャーを作ろうとしているカット(『【懺・】さよなら絶望先生』第3話TVK放送版より)オリジナル画像

2.5期『【獄・】さよなら絶望先生』

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劇団イヌカレーによるオープニング・デチューンの原画類です。果たして「原画」と呼べるのか分かりませんが、MADOGATARI展の時は公式に「原画」と表記されていたので本記事もそれに倣います。

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『【獄・】さよなら絶望先生』の原画配置(上巻、註巻の映像を用いて擬似的に再現)オリジナル画像
展示位置 タイムスタンプ 種別 描写
1枚目 註1′02″ 原画 学生服姿で険しい表情をした望
2枚目 ? キャラクターパーツの集まり
3枚目 上1′13″ or 下0′04″ 原画 落下しながら抱き合う望とまとい
4枚目 註1′02″ 原画 学生服姿で険しい表情をした望
5枚目 註1′03″ 原画 両手を後頭部に置き仰け反る体勢の望
6枚目 註1′03″ 原画 両手を広げて大の字の姿勢の望
7枚目 註1′04″ 原画 十字架体勢の望の周囲に円形のエフェクトが何重にも掛かる
8枚目 註1′04″ 原画 十字架体勢の望がさらに小さくなり後方に強い光が差す

原画のほとんどは註巻の映像素材なのですが、3枚目(最上段右端)のみは上巻ないし下巻のものです。もっとも註巻にもこのカット自体は存在しているのですが。

またこれも配置が謎で、使用シーンからすれば1, 4〜8枚目の6枚をひとまとまりにするのが自然なところ、なぜか2〜3枚目に別素材が挟まる配置となっていたのです。

そして配置以上に謎なのが2枚目(最上段中央)の素材です。仰け反った姿勢のカエレ、あびるの顔、シャベルを持った千里の手など細かいパーツが原画用紙上に散りばめられているのですが、これそのもののカットは『獄』と『懺 番外地』のオープニング、あるいは『懺』8話「最後の、そして始まりのエノデン」のいずれにも存在しません。未使用パーツを含んだ素材の寄せ集め、といったところでしょうか……?

【番外】原画コレクションポストカード

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会場地下2階のオフィシャルストアで販売されていたグッズの中には、資料性のある商品も含まれていました。それが「原画コレクションポストカード」で、キャラクターの画はもちろん、カット番号やその他のメモ書きを含めて原画をそのままポストカードにした商品です。私はこれを「ポストカード」にする意義が理解できず(本来の使用法での需要があるとは思えない)、それよりも原画集として本にまとめて欲しいと思う次第なのですが、それはさておきその選定も興味深いものとなっています。

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原画コレクションポストカードのうち『さよなら絶望先生』シリーズ4種(展示会公式サイトのグッズページ(shaft-50th.jp)掲載画像を元に作成)オリジナル画像
商品名 作品クール 展示位置 描写
さよなら絶望先生 A 1期 1枚目 左手で頭を抑えながら苦悩の表情をする望
【獄・】さよなら絶望先生 B 2.5期(上or下巻) 3枚目 落下しながら抱き合う望とまとい(劇団イヌカレー)
【懺・】さよなら絶望先生 C 3期 なし 宇宙で舞う可符香
【懺・】さよなら絶望先生 D 3.5期(下巻) なし 可符香の顔に「オマエモダヨ」の文字(劇団イヌカレー)

上表のように『さよなら絶望先生』シリーズの原画4種のうち、後期に追加されたCとDは会場に展示された原画とは無関係のカットが選定されていたのです。

このうちDはMADOGATARI展で展示があったものなのですが、Cに関しては過去の展示例もなく、原画としては今回のグッズが初出しでした。これは何を意味しているのでしょうか。前述のとおり、このカットは3期オープニングの中ではキャラクターに動きのあるシーンのものであることを踏まえると、なんとなく想像が付きそうですが。