JR の往復割引乗車券、最後の購入

今年(2026年)の3月13日をもって JR グループの往復乗車券、連続乗車券の発売が終了します。一次情報として JR 各社のニュースリリースにリンクを張りたいところなのですが、北海道、東日本、東海、西日本、四国の各社は「リンク先はトップページのみ」という謎ルールが設定されているため、唯一そのような記載のない JR九州のサイトへリンクします。

私はきっぷ収集家ではないので、消えゆくからといってあえてそれらを利用した旅行をしようとは思わないのですが、偶然にも終了間近になって往復割引乗車券を購入する機会に恵まれた、というか条件を鑑みてそれが最良の選択となった次第です。

往復乗車券と連続乗車券の終了は、往復割引の廃止による実質的な値上げや、複雑なきっぷを減らすことで発券コストの削減を目指す JR 側の意図もあるのでしょうが、それ以上に社会的ニーズが低減した面も大きいと思っています。しかし利用ケースによっては、ネット予約や割引きっぷでなく相変わらず普通乗車券での往復利用が最適なこともあります。そこで本記事では、往復割引乗車券が存在した最末期に一利用者として他きっぷとの比較検討をした記録を残す次第です。

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往復乗車券の券面に印刷された「復割」の文字。オリジナル画像

横浜市内⇔大分県北部の往復利用

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さて今回の行程は自宅のある神奈川県から大分県への往復移動です。関東から九州へ移動する場合、空港の利便性が良い福岡県や、地理的に遠い長崎県、鹿児島県であれば一般的に飛行機の方が便利なのですが、以下の条件により私のケースでは鉄道移動でも所要時間はあまり変わりません。

  • 自宅は新横浜駅に近いため、東海道新幹線を利用しやすい
  • 目的地は北九州空港と大分空港の中間地点であり、飛行機ではどちらからも行きにくい

それなら空港まで(から)の移動や搭乗手続き、便数を考えれば鉄道の方が便利です。そのうえで途中下車不要な往復利用であればきっぷの買い方には以下の選択肢があります。

  • 普通乗車券(往復割引乗車券)+ 特急券
  • インターネット予約(東海道・山陽新幹線「スマートEX」+ JR九州「九州ネットきっぷ」など)
  • 各旅行会社のホテルパック(個人ツアー)

現地の宿泊を駅前のビジネスホテル2泊(シングル、朝食付き)とした時の、代表的な価格一覧を安い順に示します。

きっぷの種類 車種 列車価格 ホテル価格 価格合計
【参考】JTB国内旅行ツアー 普通車指定席 ¥53,800
EX早特21 + 九州ネットきっぷ 普通車指定席 (¥17,920+¥2,230)×2 ¥7,300×2 ¥54,900
EX早特7 + 九州ネットきっぷ 普通車指定席 (¥18,620+¥2,230)×2 ¥7,300×2 ¥56,300
往復割引乗車券 + 自由席特急券 普通車自由席 ¥25,300+(¥7,600+¥1,000)×2 ¥7,300×2 ¥57,100
スマートEX自由席 + 九州ネットきっぷ 普通車自由席 (¥21,020+¥2,230)×2 ¥7,300×2 ¥61,100
往復割引乗車券 + 特急券(通常期) 普通車指定席 ¥25,300+(¥9,190+¥1,530)×2 ¥7,300×2 ¥61,340
スマートEX + 九州ネットきっぷ 普通車指定席 (¥22,410+¥2,230)×2 ¥7,300×2 ¥63,880
【参考】JTB国内旅行ツアー グリーン車 ¥67,600
EX早特3 + 九州ネットきっぷ グリーン車 (¥24,320+¥3,430)×2 ¥7,300×2 ¥70,100
往復割引乗車券 + 特急券(通常期) グリーン車 ¥25,300+(¥16,450+¥2,300)×2 ¥7,300×2 ¥77,400
スマートEX + 九州ネットきっぷ グリーン車 (¥29,670+¥3,430)×2 ¥7,300×2 ¥80,800
  • JTB国内旅行ツアーの宿泊は素泊まりプランなので、実際には朝食2回分を足すことで正しい価格比較になるでしょう。

このようにまとめると、旅行会社の個人ツアーはEX早特21(普通車指定席)やEX早特3(グリーン車)などの早期割引と近い価格に設定されていることが分かります。そのうえで列車のインターネット割引ほど早めに予約する必要もないので、宿泊を伴う場合には有力な選択肢となるでしょう。一方で利用できる列車に制限があったり、列車変更ができなかったりといった注意点もあります。

このためおおむね以下のような選定となります。

  • 早期に移動時間が確定できる場合:インターネット早期割引ないし旅行会社の個人ツアー
  • 数日前までに移動時間が確定できる場合:旅行会社の個人ツアー
  • 直前まで移動時間が確定できない場合:普通乗車券

今回は往路の移動時間が確定できたのが出発5日前で、EX早特は普通車用、グリーン車用とも設定終了ないし所定数完売しており、すなわち早期割引が使用できない状況でした。また復路の移動時間は当日まで分からないため、旅行会社のツアーも利用できません(列車変更不可なので)。とすると選択肢は普通乗車券しか残されていないのですよね。趣味の旅行なら事前に移動時間が確定できずとも、遅めの列車を取っておいて時間が余れば観光等で調整することも容易ですが、ビジネス移動だとそうもいかないからです。

以前は小倉駅での乗り継ぎ割引により在来線の料金券(特急券)が半額になっていた取り扱いが2011年に廃止、運賃の往復割引も今年(2026年)春に廃止と、普通乗車券での長距離往復移動は年々厳しくなってきています。その一方で使い方によってはインターネット割引で昔より安く移動できるケースも増えてはいるので、一概にサービス低下とも言えない状況です。ただし複数路線の乗り継ぎやJRの会社を跨いだ移動の場合に割引きっぷの設定が皆無なのは明らかに分割民営化の弊害と言えます。今回、往復割引乗車券という昔ながらの制度を利用することになったのも、インターネット販売のきっぷの場合は新幹線と在来線(日豊本線)を別々に買わなければならないことが料金面でも響いた結果だからです。

1997年との比較

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余談ながら一昔前との比較をしてみます。手元に1997年9月のJR時刻表があり、巻末のピンクページには多数の割引きっぷの情報が掲載されています。現在と大きく異なる点は以下のとおりです。

  • 「のぞみ」はおおむね毎時1本
    • 新横浜駅は基本的に通過で、早朝、深夜のみ一部列車が停車
  • 東京―博多直通の「ひかり」が多く運転されていた
    • 九州まで先行する「ひかり」はさすがに存在せず、途中駅で「のぞみ」に乗り換えた方が早く到着する
    • しかし乗り換えの手間や料金差を考えると、新横浜から小倉まで「ひかり」で移動する需要もそれなりにあったはず
  • 寝台列車がまだ多く運転されていた
    • 東京駅発の定期寝台列車は富士(南宮崎行)、さくら(長崎行)、はやぶさ(西鹿児島行)、出雲1号(浜田行)、あさかぜ(下関行)、瀬戸(高松行)、出雲3号(出雲市行)、銀河(大阪行)の8本

当時は周遊券があった時代でしたが、単純な往復利用の場合は「往復割引きっぷ(組合せタイプ)」の存在が大きかったと思います。これは乗車券と料金券が一体になったもので、往路は寝台列車、復路は新幹線といったようにさまざまなパターンを選択することができたものです。

今回の旅行にもっとも近いパターンとして東京都区内⇔大分駅の価格を見てみましょう。

  • 往復とも普通車指定席(新幹線 + 日豊本線特急、ただしのぞみ不可):¥39,140
  • 片道は普通車指定席、もう片道は寝台列車のB寝台(ただし個室不可):¥35,880
  • 往復とも寝台列車のB寝台(個室不可):¥32,620

現在の最安値は前記のとおりEX早特21 + 九州ネットきっぷで横浜市内⇔大分県北部が ¥40,300 ですから、往復とも昼行列車で行く場合はのぞみ号利用不可であることを考えると当時の状況にそれほど魅力は感じません。一方で寝台列車利用の場合、鉄道の価格だけで比較してもかなり安いですし、もしホテルの前泊を省略できれば料金差は1万円以上になるでしょう。

  • ちなみに通常の料金券を購入した場合、東京から大分まではひかり号 + 在来線特急の普通車指定席が ¥9,210、寝台特急のB寝台(客車二段式)が寝台料金と合わせて ¥9,450 でした。本来は料金差がほとんどないにも関わらず、割引きっぷでは大きな差が生じていたのはどういう理由だったのでしょうね。利用率が低迷していたと言われている開放型B寝台の利用を促す側面があったのでしょうか。

なお当時の寝台特急富士のダイヤはこんな感じです。

  • 東京16:56→横浜17:22→(中略)→行橋7:51→中津8:11→宇佐8:38→別府9:22→大分9:36→(中略)→南宮崎13:31
  • 南宮崎13:23→(中略)→大分17:02→別府17:14→宇佐17:56→中津18:25→行橋18:47→(中略)→横浜9:35→東京9:58

大分以北であればビジネス利用としても現実的なダイヤであり、とくに下り列車は翌朝始発の新幹線で東京を出るよりも3時間以上現地に早く到着していました。もちろん遅延リスクは新幹線より大きかったでしょうし、開放型寝台のみでB個室は利用不可、また当時はすでに食堂車の営業はしていなかったなどの不便な点もあり単純な比較はできないのですが、ホテル1泊分を含めても4万円以内で大分まで往復できたことになります。