クメタ・プロダクションの西新宿の仕事場が掲載された建築雑誌

久米田先生のこれまでの仕事場は『かくしごと』単行本6巻〜12巻の「うろ覚え 漫画家仕事場遍歴」でまとめられています。

場所 部屋 特徴
相模大野 木造アパート、3Kメゾネット、6万5千円 道路計画で斜めにカット
方南町 RC造マンション、3DK、15万円位 隣が教会
西新宿 高層マンション、80㎡、2LDK リフォーム
渋谷公園通り 6F・7Fメゾネット、約60㎡、15万円 築40年、老朽化で取り壊し

これらのうち、西新宿のタワーマンションは持ち家で大規模なリフォームを行い、「巨大な水槽」「壁一面の斜めの本棚」「階段で上がる浴槽」などユニークな部屋となっており、これまでにいくつかの媒体で紹介されています。

このうち『行け!!南国アイスホッケー部』の21巻ではなんか建築雑誌にも出るみたいだからキョーミのある人はチェックしてみようとあり、そのうちチェックしたいと思いつつもズルズルと先延ばしにしていたのですが、今年に入ってからようやく本腰を入れて探すことにしました。調べてみるとそのものズバリ建築雑誌(jabs.aij.or.jp) という名前の老舗雑誌があったのですが、これは業界向けの専門誌のようで、リフォームの紹介をする雰囲気ではありません。図書館で建築・住居デザイン系の雑誌を片っ端から漁ったところ、モダンリビング(www.hearst.co.jp) の1996年11月号(No.109)で発見できました。

「モダンリビング」1996年11月号の久米田邸特集ページ(pp.170-171)

インテリアデザイナー直井由美里(www.yumily.co.jp) 氏による「住まいのデザインリフォーム相談シリーズ」の15回目の連載記事で、部屋の様子がカラー写真で大きく掲載されているのはもちろん、リフォーム前後の間取り図や直井氏のコメントも掲載されています。それによると、斜めの本棚は本が倒れない工夫、また本棚前のワークスペース(久米田先生の執筆作業場所)が一段高くなっていたのは床下に収納スペースを設けるためという機能的な意味合いもあったとのこと。

「かってに研究しやがれBOOK」に掲載されていた写真では薄暗さと雑踏さが感じられるものでしたが、この雑誌に掲載された写真は入居前か、あるいは少なくともスタッフらが出入りする前に撮られたものと思われ、備え付けのTVや家具以外のものが一切置かれていないため、これまで改蔵ファンブックの写真からイメージしていたものとはかなり印象が異なります。また、作業場所だけでなくサンデーの編集者も入ったことがなかったというベッドルームやバスルーム、またステンドグラスの扉が付いた玄関ホールの写真も大きく掲載されており、久米田先生ファン必見の特集記事となっています。

25年前の号で Amazon 等でも取り扱いがないため入手は難しいかもしれませんが、一部の図書館には収蔵されているので[1]、読んでみてはいかがでしょうか。

なお、2020年11月に行われた久米田康治画業30周年記念トークショー「かってに回想 ~30年間の『なくしごと』~」(l-tike.com) のトークライブ第1部ではアシスタントだった畑健二郎先生が「部屋を2つ借りていた」と証言しています。間取り図を見てもあくまでひとつの部屋をリフォームしたように思えるので、リフォームした部屋(仕事場&寝室)とは別に自宅用としてもう一部屋借りていたのかもしれませんね。

『なくしごと』トークライブで畑先生が西新宿の仕事場に言及するシーン

ちなみに、『さよなら絶望先生』以降はアニメ化などでインタビューを受ける機会も多くなり、その際に仕事場の様子が掲載された媒体もいくつか存在します。

掲載誌 発行時期 内容
もう、しませんから。 3巻(Amazon) 2006年5月 西本英雄先生による久米田プロの訪問マンガ。「渋谷公園通り」の仕事場の様子が描かれている。久米田先生が失踪のため前田さんと担当の竹田さんが応対。
季刊エス 18号(Amazon) 2007年3月 インタビュー記事(p.66)に「渋谷公園通り」の仕事場の写真が3点掲載。
オトナアニメ Vol.6(Amazon) 2007年10月 インタビュー記事(pp.108-115)に「渋谷公園通り」の仕事場の写真が数点掲載。
アニメージュ 2008年2月号(Amazon) 2008年1月 インタビュー記事(pp.64-65)に「渋谷公園通り」の仕事場の写真が数点掲載。
このマンガがすごい! SIDE-B(Amazon) 2008年8月 インタビュー記事(pp.27-37)に「渋谷公園通り」の仕事場の写真が数点掲載、作業机周りの俯瞰図も。
季刊エス 40号(Amazon) 2012年9月 インタビュー記事(pp.42-47)に「渋谷公園通り」の次の仕事場と思われる写真が5点掲載。
久米田康治、まさかの背信行為(YouTube) 2020年11月 画業30周年記念トークショーの開催を記念した動画で自宅の一室を公開。

これらからすると、『かくしごと』で描かれた「渋谷公園通り」の仕事場が老朽化で取り壊されたことで、少なくとも1回は引っ越しをしていることが分かります。現在は仕事場をなくして自宅の一室を作業場としているようですが、季刊エス 71号(Amazon) のインタビューではイギリス風の仕事場をそこは、たぶん今も住んでいる所と言われているので、もともと自宅兼仕事場だったところを自宅専用にしたのかもしれません。

……ということを念頭に置きつつ『かくしごと』9巻の引っ越し(遷都)の話を読み返してみるとけっこう面白かったので是非。

脚注

  • 1.

    東京近郊だと国会図書館(id.ndl.go.jp) 、東京都立図書館(中央、多摩)、埼玉県立図書館、横浜市立図書館に当該号の所蔵があることを確認しています。 ↩ 戻る