多摩地域の国有化私鉄の鉄道省文書が閲覧できる「たましん地域文化財団 歴史資料室」
国立駅前にあるたましん地域文化財団 歴史資料室(www.tamashinhistory.org
)に鉄道省文書を複写して書籍タイプにした資料(新聞の縮刷版に近いイメージ)が収められていると聞き、閲覧してきました。
鉄道省文書[1]は数多の変遷を経て現在は2か所に分散して保管されており、現存私鉄の許認可関係は国立公文書館、国有化された私鉄分などは鉄道博物館にあります[2]。分散の経緯は青木栄一氏による記事「鉄道史研究と『鉄道省文書』」(hist-geo.jp
)を参照いただければと思いますが、国立公文書館(www.archives.go.jp
)では簡単な手続きで原本を閲覧できる一方、鉄道博物館のライブラリー(www.railway-museum.jp
)は2024年8月現在予約制であること、その予約方法は電話のみであること、収蔵品の Web 検索ができないこと[3]、博物館入館料が必要なことなどから閲覧のハードルがやや高いものとなっています。
一方この歴史資料室においては、その性質上多摩地域の路線のみではあるものの、駅からロータリーを挟んで目の前の好立地、入館無料、開架で好きなだけ閲覧できるといった利点があります[4]。
鉄道省文書は入口から受付を回り込むように折り返したところの「外部提供資料棚」にあり、収蔵リストは以下のとおりとなります。
鉄道会社名 | 巻数 | 原本所蔵 |
---|---|---|
川越鉄道 | 交通博物館 | |
甲武鉄道 | 1~2 | 交通博物館 |
五日市鉄道 | 交通博物館 | |
奥多摩電気鉄道 | 1~2 | 交通博物館 |
横浜鉄道 | 1~3 | 交通博物館 |
青梅鉄道 | 1 | 交通博物館 |
青梅電気鉄道 | 1~15 | 交通博物館 |
南武鉄道 | 1~20 | 交通博物館 |
敷設請願却下 | 8, 24, 25, 27 | 国立公文書館 |
鉄道局文書 日本鉄道 | 1~2 | 交通博物館 |
- 巻数のナンバリングは歴史資料室独自のもので、鉄道省文書原本の簿冊に記載されている通巻番号とはズレがあります。具体的な年代や原本通巻は実際に中を開き1ページ目(原本の表紙)を見ないと分からない状況ですが、そこは開架資料なので一瞬で確認できます。
- 原本所蔵が「交通博物館」とあるのは、現在は鉄道博物館に移管されているものと思われます。
この棚には鉄道省文書以外にもいくつかの資料があり、鉄道関係では「鈴木家文書(交通関係資料)」(立川市歴史民俗資料館蔵)、および東京都公文書館所蔵の「鉄道関係件名目録」(明治27年~昭和18年)と「鉄道関係史料」(明治27年~昭和3年)が置かれていました。
また、この他の棚にも多摩地域の現存私鉄(西武鉄道、京王電鉄など)に関する図書や社史があり、中にはパンフレットのように普通の図書館にはあまり置かれていないであろう資料も見られます。
なお複写サービスはあるのですが、鉄道省文書に関しては外部提供資料のため対象外となっており、コピー機や写真撮影による複写は不可とのことでしたのでご注意ください。そもそもが原本のデータを元に印刷されたものであり、箇所によっては文字が読みづらいなど本格的な調査には向かない面もあるため、鉄道博物館ライブラリーや国立公文書館の代替ではなく、適宜使い分ける心持ちでいた方がよいでしょう。
脚注
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1.
時代により「鉄道院文書」や「運輸省文書」もありますが、本記事では簡便に「鉄道省文書」で統一します。 ↩ 戻る
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2.
このほか各都道府県の公文書館に保管されているケースもあります。 ↩ 戻る
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3.
Web 検索システムとして収蔵図書データベース(
jmapps.ne.jp
)が公開されていますが、その対象は図書、雑誌類のみのようです。 ↩ 戻る -
4.
隣の西国分寺駅には東京都公文書館や都立多摩図書館があるので、掛け持ちでの調査ができるメリットもあります。多摩図書館は雑誌のバックナンバーが豊富で、黎明期の「鉄道模型趣味」など国会図書館にもない号も多く収蔵されているので、文献調査には欠かせない施設ですね。 ↩ 戻る