上田電鉄 7253編成と7255編成の形態差違

上田電鉄から7253編成引退について(www.uedadentetsu.com) という発表がありました。2014年9月をもって 7253-7553 の編成が引退するとのことで、検査体験ツアーなどの各種イベントが行われるとのことです。

7255-7555 の編成は引き続き残るものと思われますが、同じ丸窓装飾が行われた同士とはいえ、細部を見れば様々な違いがあります。今ならまだ両者の比較もできるので、私が気づいた限りの差異を紹介します。

  • なお、調査期間が長期に渡っているため、必ずしも最新の状況とは限りません(とくにここ数年はあまり状況を追えていないので……)。お気づきの点がありましたらご連絡いただけると幸いです。

| 上田車号 | 東急車号 | 東急旧車号 | 東急呼称 | | - | - | - | | 7251 | 7257 | | 3次車 | | 7252 | 7252 | 7206 | 1次車 | | 7253 | 7253 | 7207 | 2次車 | | 7254 | 7254 | 7208 | 2次車 | | 7255 | 7258 | | 3次車 | | 7551 | 7551 | 7505 | 1次車 | | 7552 | 7557 | | 3次車 | | 7553 | 7553 | 7507 | 2次車 | | 7554 | 7511 | | 3次車 | | 7555 | 7558 | | 3次車 |

「まるまどりーむ号」のHMを付けていた頃の 7253-7553 (2005年10月撮影)
  1. 台車
  2. SRアンテナ痕
  3. コルゲート(窓上・車端部)
  4. 側入口滑止め
  5. 運客仕切下部の押金
  6. 塗油器点検蓋
  7. 戸袋広告
  8. 窓把手
  9. 側窓カーテンレール
  10. 座席
  11. 優先席(シルバーシート)
  12. 荷棚
  13. 吊手
  14. 中吊広告受け
  15. 運転台

台車

§

7200系の電動車が履くTS-802型(w0s.jp) には、側梁の形状に2タイプがあります。製造当時の状況は分かりませんが、上田、豊橋、十和田の譲渡車両を現車調査したところ、1968年(3次車)の増備途中から変更されたものと思われます。上田電鉄に残る電動車2両は 7253 が2次車、 7255 が3次車ですが、どちらも初期型のタイプとなっています。

制御車については、 7551 を除きTS-708型(w0s.jp) からTS-835型(w0s.jp) への交換が行われましたが、 7553 は軌条塗油器の油噴口が設けられていました。ところが、これは2011年に撤去されてしまいました。

よって、現在は電動車、制御車ともに編成による台車の差異はありません。

SRアンテナ痕

§

一部の先頭車には東急時代に使われていたSRアンテナの痕跡が残っています。

  • 7253: 土台あり・配管埋め込み
  • 7255: なし
  • 7553: 土台あり・配管埋め込み
  • 7555: 土台あり・配管露出

7255 は東急での列車無線導入後に先頭に出た経験がないためSRアンテナ痕はありません。廃車になった車両では 7251 も同様でした。

SRアンテナ土台 + 配管(7555)

コルゲート(窓上・車端部)

§

7200系のステンレス車は2次車の途中(1967年12月以降に入籍した車両)から車両端のコルゲート長さが若干短くなっています。

廃車になった車両も含めると 7252〜7254, 7551, 7553 の5両が長いタイプなので、 7253-7553 の引退後に伴い上田では見られなくなることになります。

側入口滑止め

§

格子状のものと、レール方向に直線状の凹凸の付いたタイプが存在します。

7255, 7553, 7555 の3両は箇所によって両者が混在していますが、 7253 は直線凹凸タイプに統一されています。

格子状の滑り止め(7251)

運客仕切下部の押金

§

運客仕切は1997年の別所線ワンマン化にあたって扉部が改造されています。

その影響によるものかは不明ですが、 7253 のみは下部の押金がアルミ製(?)に交換されています。廃車になった車両では 7252 も同様の改造が行われていました。

運客仕切(7252)

塗油器点検蓋

§

7553 の床面には塗油器点検蓋が存在します。なお、 7551 にも点検蓋がありましたが、把手の位置が異なっていました。

塗油器点検蓋(7553)
塗油器点検蓋(7551)

戸袋広告

§

側窓の戸袋部分には広告枠が設置されていますが、丸窓電車化にあたって一部を除き撤去されました。 7253-7553 は各車3か所、 7255-7555 は各車4か所の設置となっています。

窓把手

§

妻窓、側窓は一段下降窓なので、上部に把手がありますが、2次車まではネジ止めタイプ、3次車以降は枠と一体型になっています。

客室内から見たネジ止め把手の側窓(7253)

側窓カーテンレール

§

2次車以前は引掛穴が4か所ありますが、3次車以降は下部の2か所に減っています。

2次車以前(7254)
3次車以降(7554)

座席

§

7253-7553 はまるまど号になった際に赤色のモケットに交換されました。

7255-7555 は東急時代からのオレンジとブラウンのモケットのまま、まるまど号化されましたが、後にこちらも赤モケット化されています。

オレンジ&ブラウンモケット時代のクハ7555

優先席(シルバーシート)

§

元々は上田方先頭車の連結側車端部(4人掛け座席)が "シルバーシート" でしたが、いつの頃からか各先頭車のもっとも運転台寄りの側窓に "優先席" ステッカーが貼られるようになりました。上田方先頭車は一時期、車端部と合わせて2か所が優先席(シルバーシート)という状態になっていましたが、車端部の方は徐々にステッカーが剥がされて一般席にされました。

なお、まるまど号となった車両は丸窓部分を避けて、ステッカー位置は運転台寄りから2番目の側窓とされました。

車端部から移動された理由は分かりませんが、ワンマン化にあたりなるべく乗務員から近い位置が望ましいと判断されたのではないかと推測しています。

車端部にあった頃のシルバーシート(7252)

荷棚

§

2次車以降の車両のうち、端から2番目の荷棚受けは車両によって側壁に連結されたものとそうでないもの(荷棚手前と奥のパイプ管を繋ぐだけ)が存在します。

廃車になった車両も含めると、前者は 7251, 7255, 7552, 7554, 7555 なので、一見すると3次車から連結タイプに変わったと判断しそうですが、

  • 豊橋鉄道1802(東急7206), 1810(東急7255)が法則に当てはまらない
  • 他の部分の受け具とは材質が異なる
  • 東急7681(元7512)の一部箇所、上田7554、豊橋2807(東急7554)のように、塩ビ管用の穴[1]が空けられていないものが存在する

ことから、後年に補強として挿入されたものではないかと思われます。

側壁に連結する荷棚補強材(7251)
側壁に連結していない荷棚補強材(7253)

吊手

§

座席前の長い吊手(レール方向)にはスリーブが取り付けられていますが、 7253-7553 は広告が差し込めるタイプとなっています。ただし通常は何も掲出されておらず、少なくとも私は広告が挟まれているのを見たことはありません。

7255-7555 はまるまど化前と同じく、ながの東急百貨店の広告が印字されたものとなっています。

現在残る4両は2006年〜2007年頃にバンドが交換され、止具は金属製(銀色)からプラスチック製(白色)へ変わりました。

金属止具時代の吊手(7253)

中吊広告受け

§

一部の車両は吊り具と天井との間に金属板(?)が挟まれています。

廃車になった車両も含めた上田電鉄での対象車は、 7252〜7254, 7551, 7553 なので、一見すると2次車以前と3次車以降での違いと判断しそうですが、豊橋鉄道譲渡車の状態を見る限り[2]、車両の製造時期は関係ないように思えます。

中吊広告(7254)

運転台

§

7255 のみ5点表示灯が白地のものです。廃車になった車両では 7251, 7254 も同様に白地タイプでした。

運転台(7255)

脚注

  • 1.

    東急の車両の荷棚は以前は塩ビ管で、1980年デビューの8090系から金網に変更されました。 ↩ 戻る

  • 2.

    金属板ありの車両は1807(東急7251), 1808(同7260), 1858(同7452), 2807(同7554), 2808(同7560), 2809(同7552), 2810(同7551)の7両。 ↩ 戻る