こどもの国線からきたデハ7052! ちょっとヘン!!

横浜市金沢区にある総合車両製作所(www.j-trec.co.jp)の本社・横浜事業所では、東急車輛産業遺産として3両の電車が保存されています。

東急車輛産業遺産とは、前身である東急車輛製造時代の2008年に設立された保存制度で、同社のニュースリリースでは次のように説明されています。

市場を開拓し、当社の事業基盤を築いた製品を東急車輛産業遺産に指定のうえ、その製品に係る事業所に永久保存する制度です。エポックメークとなった製品を保存することによって当社のこれまでの業績を「見える化」し、それにより、商品力・ブランド力の向上、技術伝承資料としての活用、社員のモチベーション向上などの効果を期待しています。

東急車輛産業遺産制度を設立し、日本初のステンレス電車(当社製)を永久保存します(PDF)(www.tokyu-car.co.jp)

このうち、2009年に第2号に指定された7000系(デハ7052)ですが、1989年に相方のデハ7057とともにワンマン化改造を施されてこどもの国線専用車になり、2000年の廃車後は東急車輛で牽引車として活躍という経歴を持っています。保存にあたりこどもの国線時代からの装飾を剥がされ、新製時と同じ帯なしスタイルに戻っていますが、ワンマン化に際して増設された各種機器はほとんどそのままとなっており、ただの7000系とは一味違う魅力を持っています。

CP圧力制御装置

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デハ7052, 7057はワンマン化改造に際し、運転台がワンハンドルマスコンタイプに交換されましたが、ブレーキ装置は従来どおり電磁直通ブレーキ(HSC-R)ですから、運転台からの電気指令を空気圧に変換する必要があります。そのため、主幹制御器からの電気信号を直通管(SAP)圧力へ電空変換する「CP圧力制御装置」[1]が海側に搭載されました。

このような例は国内でも多くないと思いますが、東急電鉄では同時期に7700系1〜3次車(後に電気指令式に再変更)とデハ7200・デヤ7290でも同様の改造が成されており、ワンハンドルへのこだわりが垣間見れます。

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デハ7052のCP圧力制御装置オリジナル画像

踏面清掃装置

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運転台方の台車にはコイルばねによる踏面清掃装置が設置されています。7000系が履くTS-701形台車は外側ディスクブレーキが特徴ですが、こどもの国線の特性から踏面を綺麗にしておく必要があったのでしょうか。

同様の装置は東横線クハ1000形、クハ1100形(w0s.jp)や、池上、多摩川線のクハ7915(廃車済)にも設置されていますが[2]、TS-701形台車に踏面清掃装置が設置された例はこどもの国線専用車のみと思われ、貴重な個体といえるでしょう。

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デハ7052の運転台方台車オリジナル画像

発車ベル

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連結面の右側(東急時代で言う山側)には発車ベルが設置されています[3]

こどもの国線7000系は基本的にワンマン運転であり、発車時は車載のベルが鳴らされていました。1996年に発売されたビデオ東急新玉川線・田園都市線 他3線(Amazon)に下り列車の運転台展望が収録されており、長津田発車時に音量は小さいながら聞くことができます。

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デハ7052連結面の発車ベルオリジナル画像

集電装置

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謎なのがパンタグラフで、ホーンが末端で結合しているタイプとなっています。東急時代末期は、現在の7700系のように末端まで2本のタイプとなっていたのですが、東急車輛に来てから交換したのでしょうか。台枠には怪しげな機器が付いており、避雷器も撤去されるなど好奇心をそそられます。

山側に銘板が付いていますが、双眼鏡や望遠レンズを持って行かなかったため未調査です。Nゲージ鉄犬 東急デハ7052(東急車輛産業遺産車両)のディテール(ntekken.blog109.fc2.com)にパーツ写真が掲載されていますが、ちょっと読めないですね。

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デハ7052のパンタグラフオリジナル画像

この他にも、車外放送装置や室内搭載のATC装置、正面の空気ホース(東急車輛に来てからの追設)など、見どころはたくさんあります。機会があれば記事を改めて紹介したいと思います。

脚注

  • 1.

    ここで言うCPとは Controll Pipe の略で、空気圧縮機(コンプレッサー)とは関係ありません。 ↩ 戻る

  • 2.

    大井町線クハ8090形の一部車両にも踏面清掃装置が設置(w0s.jp)されていますが、形状からして1000系などとは異なりオイルダンパ式と思われます。 ↩ 戻る

  • 3.

    相方のデハ7057は海側に設置されていました。 ↩ 戻る