ジャカルタの元東急電車に残るATC装置と床下配列の謎
先日発売された鉄道ピクトリアルNo.929(2017年3月号)(tetsupic.com
)、読みました。
東急8000系グループ特集ですが、吉田正昭さんの記事「譲渡開始から丸10年 ジャカルタに渡った東急8000・8500系」の p.81 右上の写真を見てぶったまげました。2015年12月18日撮影とのことですが、なんとKCJ 8039号車(元・東急クハ8007)の床下にATC装置が残っているではありませんか。しかも貴重な初期型。譲渡直後の時点で残っていたことは、以前どこかのサイトで写真を見て知っていたのですが、全般検査をくぐり抜けて今も残っているとは思いませんでした。
国内の譲渡車の場合、東急時代に使われていた保安装置など不要なものは譲渡改造で撤去されるのですが[1]、ジャカルタではそのままなんですね。
東急8000系グループのATC装置
さて、8000系グループのATC装置は、8500系は車上搭載、それ以外の8000系、8090系、8590系は床下搭載ですが、床下タイプには大きく4タイプが存在しました。
もっとも古いのは1991年の田園都市線、大井町線ATC化時に搭載されたタイプで、装置更新に伴い田園都市線所属車(8590系)は2002年頃、大井町線所属車(8000系、8090系)は2008年に消滅しました。
東横線所属車は1997年の渋谷―菊名間ATC化に際して、踏切制御装置との連動機能や車上パターン式過走防護(ORP)などを付加したタイプの搭載が行われましたが、8000系では初期型、後期型の2タイプが存在しました。初期型は床下装置箱が横に長く、点検蓋が3枚(後期型は2枚)なので容易に見分けが付きます。
初期型は車両の廃車に伴い、2006年に消滅しました。
後期型は2008年に8000系が引退した後も、大井町線へ転籍した8590系、9000系に同型が残っていましたが、8590系は廃車、9000系は装置更新に伴い数年前に消滅しています。
というわけで、田園都市線、大井町線、東横線ともに路線のATC化時に搭載された機器は国内からは消滅しているのですが、冒頭に記載のとおり、東横線の初期型が少なくとも8039号車(元・東急クハ8007)に残っていることが判明しました。
また、「JABOTABEK RAILNEWS コラム」のブログ記事東急8000系8003編成、全検出場(blogs.yahoo.co.jp
)に掲載された写真を見ると、2011年4月の時点では8004号車(元・東急クハ8004)に大井町線の第一世代型が残っていることも分かります。こちらは6年前の情報なので今も残っているのかは分かりませんが。
KCJ 8039号車の床下機器の謎
ところで、例の記事の写真をよく見ると、ATC装置の左側にある機器も気になりますね。
東急時代はここには170kVA-SIV(w0s.jp
)の変圧器があったのですが、明らかに形態が異なります。というか、ATC装置とSIV変圧器の間には整流装置があったはずですが、そこは空っぽの空間になっています。
東急クハ8007そのものの海側床下の写真は撮っていないのですが、似た配列だった大井町線クハ8099の写真があったので、比較してみましょう。
SIV関連の機器が撤去されたり別の箱に変わったりしているということは、現地で補助電源装置を撤去ないし換装しているのでしょうか。
脚注
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1.
例外はほぼ無改造で譲渡された豊橋鉄道渥美線の1800系で、譲渡後10年ほど扉非扱装置が残っていましたが、これも2012年頃に撤去されました。 ↩ 戻る