東急8000系グループの軽量試作車と12〜13次車の形態

東急8000系、8500系は増備途中で軽量車体に移行していますが、軽量試作車を除き車体は裾絞りのない垂直車体でコルゲーションもそのままなため、一見すると非軽量車との違いが分かりにくいものとなっています。しかも、ある時点を境に一気に軽量車に移行したわけでなく、1981(昭和56)年の過渡期は非軽量車と軽量車が同時に増備されていました。

それだけではなく、パーツ毎に形態を見てみると、何かしらの改良を施したと思ったら翌年には元に戻されたものがあったりと、試行錯誤の跡が窺えるものとなっています。このような混乱した状況はマニアにとっては探究心をそそられるもので、鉄道車両趣味の醍醐味の一つといってもよいと思いますが、8000系は既に全廃、8500系も次々と消えてゆく中で現車調査による研究活動が難しくなっています。

そこで今一度、東急の軽量ステンレスカーの黎明期に製造された車両、具体的には軽量試作車と8090系を含む12〜13次車の形態変化をまとめてみたいと思います。

軽量試作車と12〜13次車の概要

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軽量試作車(8000系2両)

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1978(昭和53)年に軽量車体のデハ8400形2両(8401, 8402)が製造されました。裾を絞り、側面のコルゲーションをやめてビード成形になり、屋根肩部のRも変更されたため、それまでの車両とは大きく異なる外観となっています。

この軽量試作車は後の量産車(8090系)に似た構体をしていますが、いくつか異なる点もあります。

  • 車体上部は垂直処理(8090系は内側に傾斜)
  • 側窓上のビード本数は1本(8090系は2本)
  • 裾絞りのRが大きい(軽量試作車はR3000、8090系はR1500)
  • 側ドア下部のステップの張り出しが大きい

時期的には9-2次車と10-1次車の間に製造された車両ですが、車体形状の変化に直接関係すること以外にも、座席を従来の8人掛けから7人掛けに短縮してドア脇の立ちスペースを確保するなど、後のスタンダードになる改良をいち早く取り入れた点もあります(具体例は後述)。

12-1次車(8090系7両)

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軽量試作車の成果を基に1980(昭和55)年から軽量ステンレスカーの量産が始まることになります。

12-1次車として製造された8090系は、構体は軽量試作車に似ているものの、前述のとおり一部設計変更がされており、とくに裾絞りだけでなく上部も1.75°内側に傾斜しているため、正面から見ると「く」の字型になっているのが最大の特徴です。また8090系では構体だけでなく、台車や電気機器など車両全般で軽量化が行われていることも注目したいところです。

サムネイル画像
クハ8091(12-1次車)の形式写真オリジナル画像

12-2次車(8000系9両、8500系6両)

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8090系の登場後も従来の8000系、8500系の増備は続きます。

年が明けた1981(昭和56)年の初頭は、12-2次車と12-3次車が同時期に製造されましたが、このうち12-2次車は従来と同じく非軽量車です。外観は11次車以前とほとんど変わらないのですが、室内は吊手長さが短かかったり、側ドア脇に戸袋点検口が設けられていたりするなど、軽量車を思わせる変化もいくつか存在します。

サムネイル画像
デハ8245(12-2次車)の形式写真オリジナル画像

12-3次車(8000系6両)

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12-2次車の増備開始から1か月ほどの後、デハ8100形が6両増備されたのですが、こちらは軽量車になりました。

構体は従来の非軽量車に合わせた垂直車体・コルゲーション付き[1]となっているので非軽量車との違いが一見分かりにくいですが、外観では屋根のRが軽量試作車や8090系に準じているので区別が付きます。また、この12-3次車と次の13次車は8000系、8500系も張り上げ屋根となっています。

13次車(8000系14両、8090系16両、8500系8両)

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1981(昭和56)年の暮れから翌年3月にかけて増備された13次車では全面的に軽量車となりました。12次車は軽量車と非軽量車が混在したため混沌とした状況になっていましたが、13次車でひとまず落ち着きを見せます。

この13次車では単M車のデハ8400形(2代目)が登場し、前述の軽量試作車(初代デハ8400形)はデハ8200形に編入されました。

サムネイル画像
サハ8947(13次車)の形式写真オリジナル画像

軽量試作車と12〜13次車の形態変化

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より具体的に、各車両パーツの変化の流れを分類しました。主要なものだけをピックアップしてもこれだけのバリエーションがあります。

軽量車全体
屋根のR変更、全長ランボード廃止(パンタ周りのみに)、ジャッキアップポイント内側配置、側窓のユニットサッシ化、ドア脇立ちスペース確保(ドア間7人掛け)、蛍光灯と吊手棒受けの同列配置
軽量試作車と12次車〜
吊手棒高さ下げ(吊手長さ短縮)
軽量試作車と8090系
ビード成形、裾絞り、室内化粧板のソリッドパターン(18次車で8500系にも採用)
軽量試作車と8090系全車、および8000系、8500系の12-3次車、13次車
張り上げ屋根
12次車〜
側ドア脇の戸袋点検口
12次車のうち8090系のみ、13次車以降は全車
側面行先表示器の位置を側窓の中心揃えに、荷棚のステンレスネット化[2]
13次車〜
GTOサイリスタ式SIV(170kVA)、座席袖仕切りの大型化

実際には他にも変化のあるパーツは数多く存在しますし、後年の改造でさらなるバリエーションが発生しているものもあります。いやあ、複雑ですね。

脚注

  • 1.

    コルゲーション付きの軽量ステンレスカーは、他会社線でも京王電鉄や南海電気鉄道に存在します。 ↩ 戻る

  • 2.

    後に従来の塩ビ管タイプ(1〜11次車、12-2次車、12-3次車)もSUSに統一されています。また、12-3次車は荷棚受けの配置と形状がそれまでの車両とは異なり、さらに後年の改造に伴いドア間の荷棚受けが7つもあるという異様な形態となっていました。 ↩ 戻る