Mixa Animation Diary Plus『さよなら絶望先生』への期待と不安と

年明け早々1月に Mixa Animation Diary Plus 『さよなら絶望先生』(mikuani.jp) が開催されることが告知されました。

アニメ1期の番宣イラスト(守岡英行による糸色望イラスト)を流用した、本イベントのキービジュアル

Mixa Animation Diary では2021年から講談社作品から過去作を含むアニメ作品をピックアップしたイベントが下表のように年数回行われています。

トークライブ開催日 作品 アニメ放送時期 備考
2021年10月9日 『ダイヤのA』『ダイヤのA actⅡ』 2013年秋〜 オンライン開催
2022年3月20日 『みなみけ』 2007年秋〜
2022年5月21日 『おおきく振りかぶって』 2007年春〜
2022年7月31日 『魔法先生ネギま!』 2005年冬〜 夜の部に赤松健先生が登壇
2023年1月8日 『じょしらく』 2012年夏
2023年1月14日 『イジらないで、長瀞さん 2nd Attack』 2023年冬
2023年1月14日 『よんでますよ、アザゼルさん。』 2011年春〜
2024年1月6日(予定) 『さよなら絶望先生』 2007年夏〜 展示会開催
2024年1月27日(予定) 『のだめカンタービレ』 2007年冬〜 複製原画展開催

このラインナップを見てお分かりのとおり、『さよなら絶望先生』が来ることはもやは既定路線だったといえ、『じょしらく』が発表された時にはむしろ「そちらを先にやるのか」という驚きを感じたくらいでしたが、今回はイベント名に「Plus」と銘打っているようにトークショーのみならず展示会を含めた豪華版という位置付けのようで、満を持してといったところでしょう。

  1. 展示会
  2. トークライブ
  3. 海外チケット販売

展示会

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6日間に渡って行われる展示会は、

アニメの複製原画や、キャラクターデザインを手がけた守岡英行が描き下ろしたイラストなどが展示されるほか、

Mixa Animation Diary Plus 『さよなら絶望先生』(mikuani.jp)

とあるので、あくまでアニメの展示会であり、一挙後悔中(2016年)(www.gofa.co.jp)全曝し展(2021年)(www.kumeta-zensarashiten.com) のような原作漫画の原画展の類とは異なることが覗えますが、それ以上の詳細は撮影スポットが設けられることくらいしか発表されていないのでなんとも分かりませんね。会場の Live Cafe Mixa でこれまで開催されたイベント(livecafemixa.mixalivetokyo.com) はコラボカフェ系がほとんどだったようですが、今回はそれらとも違うコンセプトのようですし、ちょっと予想が付きません。

『さよなら絶望先生』のアニメが放送されていた時代にはこのような展示会は皆無で[1]、2015年〜2016年に全国6か所で行われた行われたシャフト展示会 MADOGATARI展(www.madogatari.jp) で他作品に混じってキャラクター設定や絵コンテ、原画の展示があった程度であり、作品単独のイベントとしては初めてのことになると思います。どういった内容になるのか楽しみですね。

トークライブ

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1月6日に行われるトークライブの内容は以下のように発表されています。

アニメを上映しながら出演者が当時を振り返るオーディオコメンタリーのほか、アニメ放送当時に配信されていた人気webラジオ『絶望放送』の再現コーナーも実施予定です。“幻の最終回の続き”をぜひお聴きください。

Mixa Animation Diary Plus 『さよなら絶望先生』(mikuani.jp)

このうちオーディオコメンタリーは声優が登壇するアニメイベントでは定番であり、今年1月の『じょしらく』イベント(mikuani.jp) でも行われていたことなので、改めて言及するまでもないでしょう。一方で『さよなら絶望放送』のコーナー再現は期待と不安が半々という複雑さがあります。

『絶望放送』があれだけ盛り上がり、アニラジとしては長寿番組となり得たのは2007年〜2011年のあの時代の空気感あってのこと。初期の回では当時サービス開始して間もない「ニコニコ動画」に関するネタも多かったですが、そういう時代の番組であり、終了からもはや12年が経ってしまった今、たとえ同じことをしてもあの時の盛り上がりは起こらないと思うのですよね。これについては2015年発売の声優ラジオの時間 ゴールデン(Amazon) におけるインタビューにて、『絶望放送』の復活の可能性についてスタッフ、パーソナリティともに否定的な考えを示されていたことも印象に残っています。

⸺未だにリスナーから「復活して欲しい」という声が少なからずあります。お二人はもし状況が許すのならもう一度やりたいと思いますか?

(田原)状況が許すとしたら、僕の中ではもう1回アニメになる以外ないです。四期が始まるならやります。

(中略)

(佐藤)迂闊にやると狙っている感があるじゃないですか。その時点で、以前のようにはならないという気がしちゃいますね。

(中略)

(佐藤)アニメが復活するようなことがあったら、その時は泣いて頼んでもやらせてくれと言うと思います。

声優ラジオの時間 ゴールデン「【俗・】さよなら絶望放送とは何か?」 p.80

⸺素直な話、『絶望放送』をまたやりたいと思いますか?

(新谷)やりたいけれど、同じタイトルでは無理だろうなって思います。超えられないと思う。当時の時代や勢いもあるし、私たちの状況もそうだし、あれから4年経ってますから。

(中略)

(新谷)だから、誰もやりたいと言わないと思います、もちろんアニメがあるんだったらやりたいです。でも、ないのに同じものを同じチームでと言われたら無理だと思うので。

声優ラジオの時間 ゴールデン「【俗・】さよなら絶望放送とは何か?」 pp.90–91

一方、2014年発売の声優ラジオの時間 アンコール(Amazon) では高橋プロデューサーが毎週でなくても○周忌とかの節目でイベントをやるのはありかなと個人的には勝手に思うこともあります。と前向きな発言をしており、今回のような1回限りの復活はまさにこのようなケースにあたるといえるでしょう。

ただいずれにせよ、当時と同じ事をしても当時と同じ面白さにはならず、かといって違うことをすればそれは再現にはならないのでもはや『絶望放送』たり得ない。それに今回初めて『絶望放送』に触れる新規ファンもいる中で懐かしネタ・内輪ネタに寄りすぎるのも良くない。そういう難しさがあると思います。

そういった不安要素もあれど、当時と同じく構成T & 佐藤D のコンビが進行・演出を担当される(X) とのことで、これらのハードルをきっと乗り越えてくれるでしょうし、その手腕に期待したいところです。

海外チケット販売

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今回驚いたのは海外向けのチケット販売(mikuani.jp) とトークライブの英語通訳が行われることです。

日本の漫画、アニメは世界中で愛されており、『さよなら絶望先生』も例外ではありません。原作コミックはいくつもの国で翻訳されていますし、アメリカ版(id.ndl.go.jp)フランス版(id.ndl.go.jp) が逆輸入(?)されて日本の国会図書館に納本されているくらいです。近年はアニメの北米版 Blu-ray が Nozomi Entertainment から発売されている[2]ことも記憶に新しいですよね。

内閣府のクールジャパン戦略(www.cao.go.jp) でもアニメを日本の魅力の一つとして挙げているほどにも関わらず、ことアニメのイベントとなるとチケットの販売や配信視聴も含めて世界的視野でのアクセシビリティがまだまだ道半ばな印象を受けます。アニメファンは気楽に「全人類観て」などと言うものの、では本当に全人類が等しく観られる環境が整備されているかというと必ずしもそうではない現実があるところ、今回の海外向けの取り組みは評価に値するところでしょう。

脚注