Mixa Animation Diary Plus『さよなら絶望先生』トークライブ、夜の部現地観覧レポート
開催中の Mixa Animation Diary Plus 『さよなら絶望先生』(mikuani.jp
)について、展示会に続き、6日に開催されたトークライブに参加してきました。公演は昼の部と夜の部がありましたが、夜の部を現地で観覧するため、昼の部はネタバレ防止の意味から配信もあえて見ずに参加。この記事を書いているタイミングでも昼の部はまだ見ていないので、すでに通しで見た方にとっては内容に不自然な箇所があるかもしれませんがご了承ください。
本会場の様子
会場は Mixalive TOKYO 6階にある Theater Mixa。建物正面の大型電照広告「Mixa ビジョン」では1時間に4回程度の頻度で『さよなら絶望先生』の広告も流されていました。去年(2023年)の同じ時期に開催された『じょしらく』イベント時は12月上旬から広告が行われたので、今年も12月中旬に現地に見に行ったのですがそのときは広告が流れず、どの時点から行われていたのかは不明ですが、少なくとも1月3日の展示会初日の時点では流れていたのを確認しています。
エレベーターで6階に上がるとすぐ正面に Theater Mixa の入口があり、チケットもぎり場の先ではプレゼント受付箱の他にひっそりと SHAFT TEN のグッズ(shaften.shop
)展示が行われていました。商品は2点のみで少し寂しい感じですが、いま新品で販売されている『絶望先生』グッズはこれだけですからね。
私の座席は2階席の最前列(M列)。他イベントの体験談をいくつか拝見したところ[1]、「ステージ手前側が見切れる」「目の前のガラス板が邪魔」といった悪評があったため覚悟していたのですが、本イベントではステージ手前ギリギリに演者が来ることはなく、またガラス板も自分の目線ではさほど気にならず快適に観覧することができました。会場自体が小規模のため2階席といえど近い距離であり、むしろかなり見上げる形になる1階前方席よりも良かったかもしれないくらいです。
サプライズゲストに久米田先生登壇
ステージのテーブルに4人分の座席が用意されていたので、サプライズゲストが来るであろうことは大方予想がついていたことでしょう。しかも、これは2階席の人しか見えなかったかもしれませんが、開始前にあらかじめ置かれた台本(?)は3人分しか用意されなかったので、ゲストは声優ではなく台本不要な扱いの人であろうということで、消去法で考えれば久米田先生が登壇されるということは可能性として予想はできましたよ。ただ久米田先生だとしたら、2020年12月に川越で行われた『かくしごと』イベント(kakushigoto-anime.com
)の時のようにきっと最後にちょろっと出て一言感想をいただくだけだろうと思っていたんです。
侮っていました。そう、今の久米田先生はもはや明石家さんまと肩を並べる程の芸能人(やや誇張表現)。そりゃあオープニングトークを台本なしでこなす程度は造作もない事だったのです。
しかし壇上に久米田先生のお姿が見えた時、「嬉しい」という気持ちと共に「しまった」という思いがよぎりました。前述のとおり私の座席は2階席、あろうことか創造主を見下ろす位置にいたのです。こんな不敬が許されるのでしょうか。いや許されるわけはない。できることなら今すぐ1階席、あるいはライブビューイングが行われている地下ホールに降りてゆきたくなりましたが、3人のリスナーと多数のサクラで会場は満席。座席変更などできるはずもありません。いたたまれない気持ちを抱えながら、しかし新年早々久米田先生のお姿を生で、そう生で拝見できるとはなんと幸福なことでしょう。EGAKU展(egakuten.com
)でのサイン会からそう日も経っていないのに。
そしてなにより『絶望先生』のイベントに久米田先生。ありえないですよ。今でこそ自撮り棒も購入されて、YouTuber としての地位を欲しいがままにされている久米田先生ですが(やや誇張表現)、『絶望先生』の連載時代はほとんど表に出られなかったですから。台湾で開催されたサイン会と中野でのチャリティーイベントのみが例外的な存在だったはずです。当時、久米田先生といえば世界でいちばんお姿を拝見したい方でありながら、『南国』単行本や『改蔵』ファンブックの写真を眺めるしかなかった天上の存在。お声だけは島本和彦先生のラジオで聴いていましたが[2]、『絶望先生』関連では某シャフトスタッフの策略(?)によりオープニングで遺影が晒された以外はその素顔を衆目に晒すことはなく、インタビューで写真が掲載された時も(本来顔出しNGではないはずのところ)加工がなされる徹底ぶり[3]。全人類が期待していた『絶望放送』のゲストに来られることもなく、最終回近くになってわずかにカセットテープでの音声出演のみであったことも懐かしい思い出です。
これは私の勝手な妄想ではありますが、きっと意図しての演出の一環だったのではないかと思うのです。『絶望先生』の作風において原作者が表に出て作品のことをベラベラ喋るのはちょっと違うと、少なくとも私はそう思います。一方で最近の『かくしごと』や『シブヤニアファミリー』においてはそういったこともなく、作品関連で、あるいはあくまで久米田康治という一人の作家としてさまざまなメディアに顔出しされても問題はないわけです。この対応の違いを久米田先生ご本人は心境の変化とか年齢的な問題などとおっしゃっているものの、「作品の雰囲気」を大切にされていたからこその違いではないかと。
ともかくも、ステージ上のディスプレイに『さよなら絶望先生』のタイトルと糸色望の姿が大写しにされた中に久米田先生がおられる様子を見て、感慨に耽るファンも多かったのではないでしょうか。これは『かくしごと』のイベントに登壇されたのとはわけが違うのです。そして『絶望先生』がアニメ放送もラジオも漫画連載も、プロジェクトとしてすべて終了して長い刻が経った今だからこそ実現したことであるといえるでしょう。
冒頭早々にこのような “重み” を感じながら、イベントは始まります。
オープニングトーク
オープニングトークというか、事実上「神谷浩史による久米田先生へのインタビュー」でしたが、もう最高でしたね。オープニングからこんなに気分が高揚するイベント、他にありますか。
奇遇ですね、私もです。『かってに改蔵』連載時代、さんざんアニメ化されないことをネタにしており、一時期は本当にアニメが実現できそうな雰囲気を出しつつも「なかったことに」されたトラウマを我々読者(主語が大きい)は当時持ち続けていたわけで、作中で原作者がアニメ化を匂わせようと[4]、単行本のオビで正式に告知されようと[5]、まるで実感が沸かず、なんなら放送当日に映像が始まってすらこれが『絶望先生』のアニメであるとは信じられず、1話アバンで風浦可符香が台詞を発した瞬間に「ああ、本当にアニメ化が実現したのだな」と実感が後から追いかけてくる経験をしました。当時リアルタイムでアニメを観ていた他のみなさんはどうでしたか? 信じられていましたか?
いやいや、2020年の『かくしごと』アニメ化以来、ちょくちょく出ているじゃないですか。TV 番組だけでも2020年〜2023年の4年間で3回、インターネット配信も含めれば10回程度、インタビューでの写真掲載なども含めればさらに多くの回数のメディア露出をされています[6]。
そりゃあ久米田先生はアイドルでいらっしゃいますから。そう思っているのは椎名高志先生だけではないはず。
連載終了直後にインタビューが行われた季刊エス 40号の「さよなら絶望先生連載完結記念インタビュー」でも同じ発言をされていますね。大丈夫ですよ、昔の発言と同じですよ。この直後に話されていた、「ラストの展開は最初から考えていたのか」についての回答を含めて同じですよ。
そしてオープニングトークコーナーの終了とともに久米田先生ご退席。ラジオ楽しんでいってください
といいながら手を振って頂けたのでこちらも全力で手を振り返す。EGAKU展(egakuten.com
)でのサイン会の時も退席時に手を振って頂けたのですが、この時は最後にサインをして頂いていた方以外には、少し離れた場所でずっと眺めていた私と、たまたまそのタイミングで展示を見ていた数人しか観客がおらず、しかもとっさのことだったのでリアクションができなかった苦い思い出があるので(これも不敬行為といえるでしょうね)、その贖罪の意味も込めて全力で振り返しましたよ。
ステージから捌ける際、観客が最後の瞬間まで久米田先生のお姿を見られるようにでしょうか、上手側にいた構成 T が立ち上がり壁際に寄ったのもさりげない配慮で素敵でしたね。
アニメ『さよなら絶望先生』ふりかえり
アニメを流しながら登壇者がトークするという、生オーディオコメンタリーのような感じ。夜公演では第一期の最終話(12話)「なんたる迷惑であることか!」のAパートを流したのですが、なんともコメントに困る内容で登壇者お三方ともほとんど発言できず、ちょっとした小ネタ解説があった程度で有用な話はほとんど聞けませんでした。だいたい野中藍と新谷良子がいるのですから、可符香が歌う回とか奈美メインの回とかやればいいのに、なぜ加賀愛の登場回を選んだのかと。『絶望先生』のアニメ DVD にはオーディオコメンタリーの類はなく、いつかイベントで生アフレコや生コメンタリーをやっていただけたらと期待していただけに、せっかくの機会を生かし切れていなかった結果となり、これは正直イベント内で唯一不満が残ったコーナーとなりました。
一方で、一期の11話と12話で不自然な入れ替えがあったこと自体は当時から話題に挙がっていたものの、その理由はこれまであまり気に留めておらず、12話で演出(絵コンテ)を担当した尾石達也が原因であったことは、言われてみればそうですよねという気付きがありました。
あと、作中のネタや演出に対して会場でところどころ笑い声が起きたのは、他の人がどういうところに面白みを感じたのかが知れて良かったです。2021年に『劇場編集版かくしごと』のスタッフ舞台挨拶イベント(kakushigoto-anime.com
)で『【懺・】さよなら絶望先生 番外地』を流されたことがありましたが、これは映画館での上映ということもありあまり笑いが起こらなかったので、こういったイベント内でアニメ上映が行われ、他の観客の反応が聞けるのは貴重な機会ですし、(ライブビューイングや配信ではなく)本会場で参加できたなによりのメリットを感じられました。
本会場のメリットといえば作中の「加害妄想進段コーナー」で美容院でかゆいところが言えない
などの振りに対して構成 T が強く頷くリアクションをされていたのも印象的でした。配信では写っていないのがもったいなかったところです。
- 【追伸】……以上が本会場で観覧しての正直な感想だったのですが、帰宅後配信でアフタートークを聞き、あくまでアニメ一期の中からエピソードを選定する必要があったことを知ったことで、不満があったのは事実であれど、まあ仕方ないかなという感じを受けました。上記の感想はアフタートークを見る前に書いたものですが、あえて編集せず、本会場で感じた想いを文字で残しておきます。
楽曲「絶世美人」ふりかえり
こちらはトーク自体は盛り上がったのですが、そのほとんどは2009年1月に恵比寿 Liquidroom で開催された「大槻ケンヂと絶望少女たち」のライブ(voice.die1964.com
)に関する話であり、やはり「絶世美人」の楽曲そのものやエンディング映像にはほとんど触れられなかったのは残念でした。
アニメのオーディオコメンタリーというものは本作品に限らず話が脱線しがちではあるものの、こういうときに深く真面目なトークをしてくださる神谷浩史の存在に期待していたのですが、まあ絶望少女達がメインの楽曲ではトークもしづらいのでしょうね。「暗闇心中相思相愛」のふりかえりだったらあるいは良かったのかも。
- これもアフタートークを聞く前の感想なので、「暗闇心中相思相愛」のふりかえりが今回のイベントでは不可能なことに気付かず好き勝手な欲求を書いてしまっています。
『さよなら絶望放送』第205回公開録音「ウザイの騎士」
さのすけ登場
コーナーが始まるとともにさのすけが登場。さのすけは絶望放送終了後に新谷さんに引き取られ、その後もときどきブログ「はぴすま☆だいありー♪」や Instargram に登場していました。
- 2011年8月31日 絶望放送最終話収録後にお迎え(
ameblo.jp
) - 2013年5月29日 他のぬいぐるみに混じって置かれている(
ameblo.jp
) - 2015年9月7日 隅にいるらしい(写真無し)(
ameblo.jp
) - 2016年10月23日 ニコニコ生放送の『絶望先生』一挙放送で調子に乗る
- 2020年5月21日 ベッドではなく棚にいるらしい(写真無し)(
ameblo.jp
)
比較的最近までその存在が確認されていたものの、その後引っ越しでダンボールに仕舞われていたとは……。今回の出演に合わせてきちんとお手入れされたようでなによりです。ところでさのすけは2008年の誕生日プレゼントだったのでいま15歳(高校1年生)なんですよね。
オープニングトーク
オープニングトークでは『シブヤニアファミリー』や過去作をネタにしたストーリーが展開されましたが、演者が作品名を言うたびに上手席の構成 T がその単行本や Blu-ray を観客に向けて見せていたのが印象的でした。配信では演者のアップしか写っていなかったので、これは本会場の観客だけが見ることのできた仕草だったようですね。壇上に置かれた各種グッズと合わせて構成 T の私物なのでしょうけれど、メインスタッフが作品ファンであるからこそできるすばらしい演出でした。
ミニ番組
絶望放送コーナーの投稿は Google フォーム上に開設されたメールフォーム(docs.google.com
)から行う形で、投稿期間は2023年12月8日〜22日。ミニ番組の宛先としては以下の4つが設定されていました。
- 出演者宛の質問やメッセージ(ふつうのおたより)
- 「絶望した!○○に絶望した!」(望のコーナー)
- 「普通って言うなぁ!」(奈美のコーナー)
- 「ポジティブですよね〜?/ポジティブですねー!」(可符香のコーナー)
- その他のコーナー
ただ、メールフォームの告知が構成 T の X アカウントでのみ行われたのはどういうことなのでしょうか。観覧者が構成作家の個人アカウントをフォローしているとは限りませんし、ポスト Twitter サービスも多く登場した昨今、X を離れた人も多くいます。なにより中華人民共和国など X へのアクセスが禁止されている地域もある中で、公式サイトに情報を掲載せず、特定 SNS の個人アカウントでのみ情報を発信するという手段には賛同できません。なぜせっかくある公式サイトを活用しないのでしょうか。それに構成 T は Instagramや Threads(www.threads.net
)のアカウントも持っているのですから、個人活動だとしても X でしか告知できない状況ではないはずです。X はここ数年の数々の混乱を経てもまだユーザー数は多いですし、ハッシュタグを活用したリアルタイム感想においては他の SNS サービスより優れている面もあるため、X を活用すること自体に異論はありませんが、X が盛り上がるからといって「公式の告知を X でしか発信しない」というのは本来あり得ないことです。どういう判断の結果このような一部の人々にしか情報が届かないやり方になってしまったのか、それともそうせざるを得ない事情があったのか疑問が残ります。
さて、個々の投稿内容への言及はしませんが、ひとつだけ。
ふつおたコーナー内で取り上げられた「さのすけを探せ」は第59回(2008年10月15日配信)での『さよなら絶望先生』百五十六話「君よ知るや隣の国」に始まり、最終回(2011年8月31日配信)での『劇場版 ハヤテのごとく! HEAVEN IS A PLACE ON EARTH』&『劇場版 魔法先生ネギま! ANIME FINAL』に至るまで、計53作品が紹介されていましたが、その後もチェックを続けているリスナーがいたとは脱帽です。松岡健太先生もすぐさま反応されておりこういったリアルタイム性も含めて懐かしい気持ちになりました。
アフタートーク
本会場での観覧はここまで。本編終了後はライブビューイングと配信向けに約8分間のアフタートークが収録されており、帰宅後に視聴しました。
本イベントはてっきり『さよなら絶望先生』シリーズ全体のイベントだと思いこんでおり、実際9階の Live cafe Mixa での展示会では『俗』や『懺』に関する展示もわずかながら存在しましたが、アフタートークでの話を聞く限りあくまでアニメ一期『さよなら絶望先生』のイベントの扱いだったようですね。開催前に書いた Mixa Animation Diary Plus 『さよなら絶望先生』への期待と不安との記事内で、過去に行われた Mixa Animation Diary のイベントを一覧表にまとめていますが、改めて見てみると確かにアニメ放送の1期、2期、……を区別していることが分かります。
別途『俗』、『懺』のイベントが開催されることも可能性としてはあり得そうで、期待して待ちたいと思います。
昼の部の配信視聴感想へ続きます。
脚注
-
1.
ブログ「推しとおたく」の座席所感記事(
oshi-otaku.hatenablog.com
)、さらさんの X 投稿(2022年8月)、曾乃火さんの X 投稿(2023年3月) ↩ 戻る -
2.
2003年5月31日放送、島本和彦のマンガチックにいこう! 第87回 ↩ 戻る
-
3.
アニカン 2007年9月21日 Vol.43 2007年10月号A における神谷浩史との対談。 ↩ 戻る
-
4.
2007年4月11日発売、週刊少年マガジン 2007年19号掲載の第九十話「「さらっと言うな!」とメロスはいきり立って反駁した」 ↩ 戻る
-
5.
2007年4月17日発売、『さよなら絶望先生』第八集 ↩ 戻る
-
6.
これまでのメディア出演歴は久米田康治先生のメディア出演(
w0s.jp
)を参照。なお最終更新が2022年8月なので、最近の『踊る!さんま御殿!!』出演などは反映できていません。 ↩ 戻る