シングルアームパンタ化が進む北陸鉄道7000系

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北陸鉄道石川線の7000系といえば、東急(旧)7000系の車体はそのままに600V降圧化および耐雪化のため電装品や足回りを各所から寄せ集めたものに換装されたことで有名で、床下は東急時代の面影が皆無となっていますが、屋根上の集電装置も手を入れられています。

また、近年はシングルアーム型への換装が進められており、従来の菱形パンタ車は残り1両にまで減っています。

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写真1:菱形パンタグラフ時代の北陸鉄道モハ7001の形式写真(撮影: 2009年11月9日)

菱形パンタグラフのバリエーション

元々、東急(旧)7000系の集電装置は PT-43 型および PT-44 型でしたが、旧5000系や旧6000系などと同じくパンタ台枠を車体屋根に留める部分(4か所)の碍子が台枠の上下両方にあり、この形態は後継の7200系3次車まで続いていました。

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写真2:東急(旧)7000系の集電装置(福島交通デハ7113 ← 東急デハ7140・7次車)
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写真3:7200系4次車以降の集電装置は碍子が少なくなった(豊橋鉄道デハ1859 ← 東急デハ7451・4次車)

旧7000系の地方鉄道譲渡に際し、北陸鉄道譲渡車のみは集電装置が改修ないし交換されています。

まず鉄道ファン1990年9月号(No.353)p.68 や Rail Magazine 1990年9月号(No.82)p.66 に掲載されている譲渡改造中の写真(モハ7202)を見ると、集電舟末端部のホーン形状が東急時代とは異なり、一体型になっていることが分かります。また、東急時代の晩年は横控管が車端側のみ設置の車両が多数を占めていましたが、この写真では両側とも横控管を装備しています[1]。この時点では碍子は上下両方にあるタイプであり、営業開始後もそのままでしたが、(改修時期は不明なものの)現在は7200系4次車以降のように下側のみとなっています。

次に、鉄道ピクトリアル1996年11月号(No.629)の記事「北陸鉄道石川線の車両たち」p.39、および同誌2001年5月増刊号(No.701)「北陸鉄道のローカル私鉄」特集 p.90 に掲載された諸元表によると、電動車全5両の集電装置形式が「PT-4306S-B」と東急時代とは異なる形式が記載されています[2]

また、同じく鉄道ピクトリアル2020年6月号(No.973)の記事「地方私鉄へ転じたその後の東急7000系列」p.71 には集電装置が「東急8000系からの発生品に交換されている」という記述があります。8000系の集電装置は PT-4304 であり、8500系も含めると PT-4309S、PT-44S もありますが、いずれにしても諸元表に書かれている「PT-4306S-B」とは異なります。

さて、2008年~2009年にかけて私が現車調査をしたとき、集電装置の台枠は新旧2種類が存在する[3]ことが分かりました。

2009年7月にモハ7102のパンタ銘板を見る機会があったのですが、そのときは先の文献に書かれた諸元表の記載とは異なる「PT-44 C1」でした。ちなみにこれは台枠が「TDK」の古いタイプの集電装置です。

これらをまとめると、様々な仮説を立てることができます。考えられるすべてのパターンを網羅するとキリがないので、「東急8000系からの発生品に交換」は東急で8000系の廃車が始まった2002年以降の出来事であると仮定します。また、私の現車調査で PT-44 の個体を確認していることから、実際には8000系だけでなく7700系など他の車両からも流用しているものとします。

  • 譲渡改造時に「PT-4306S-B」に換装され、集電舟の形状や横控管の有無で東急時代とは異なる形態となった。後年、「PT-4304」(台枠は「TOYO DENKI」)と「PT-44」(台枠は「TDK」)に更新され、碍子の少ない外観となった。
  • 譲渡改造時に「PT-4306S-B」に換装され、集電舟の形状や横控管の有無で東急時代とは異なる形態となった。数年後に碍子の上部撤去が行われた。さらに後年、「PT-4304」(台枠は「TOYO DENKI」)と「PT-44」(台枠は「TDK」)に更新された。
  • 譲渡改造時に PT-43 ないし PT-44 のまま集電舟の交換や横控管の追設が行われた。数年後(1996年以前)に「PT-4306S-B」に換装され、碍子は下部のみのタイプになった。さらに後年、「PT-4304」(台枠は「TOYO DENKI」)と「PT-44」(台枠は「TDK」)に更新された。
2021年3月2日追記鉄道ピクトリアル誌に「東急8000系からの発生品に交換」の記述があることを Twitter で教えてもらった(Twitter)ので、それに伴い仮説を変更しました。

今となってはどれが事実か確かめるすべもありませんが、豪雪地帯を走る路線ということもあるのか、東急(旧)7000系としては唯一の事例となる下枠交差型のパンタグラフを一時期導入するなど、数年ごとにさまざまな試みをしていることは間違いなさそうです。

いずれにせよ弘南、水間など他の譲渡車とは異なる当地だけの特徴を持つ集電装置ということで、注目に値すべきものであるのは間違いないでしょう。

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写真4:北陸鉄道モハ7202の菱形パンタグラフ(台枠更新タイプ)

シングルアームパンタ化

2019年よりシングルアーム型パンタグラフへの換装が行われており、現時点で5両の電動車のうち4両がシングルアーム型に換装されています[4]

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写真5:北陸鉄道モハ7201のシングルアーム型パンタグラフ

最初にシングルアーム化が行われたのはモハ7102で、2019年2月18日に試運転が目撃(www.instagram.com)されています。その後、モハ7201[5]、モハ7001[6]、モハ7101[7]の順にシングルアーム化されました。残るモハ7202は2021年2月20日時点ではまだ菱形パンタのようです[8]

この勢いであれば今年中にでも菱形パンタグラフが消滅しそうですが、2021年4月1日のダイヤ改正(www.hokutetsu.co.jp)では減便が予定されており、平日朝7時台の本数が削減されることから、最大運用本数が現行4本のところ改正後は3本に減らされる可能性が高いです。減便の理由は例によって新型コロナウイルス感染症拡大による利用者数減少とのことなので、感染が終息すれば本数も元に戻される希望はありますが、例えば当面の間は1編成を休車にして集電装置の更新が中断される可能性も考えられます。いずれにしても今後の車両動向に注目したいところです。

  • [1]おそらく避雷器が車端部に移設されたことが関係しているものと思われます。
  • [2]ただし、鉄道ピクトリアルの記事にありがちなこととして、著者が実際に各車両の銘板を見るなど現車調査をしたわけではなく、鉄道事業者から提供された資料を検証もせず掲載している可能性はあるので(そしてそのような資料は往々にして形式の記述が正確でなかったり、車号対比が実態と異なっている場合があります)、鵜呑みにするのは危険です。あくまで参考資料のひとつとして捉えるべきでしょう。
  • [3]側面中央部の社名表記が昔ながらの「TDK」と青文字の「TOYO DENKI」の2タイプ。
  • [4]京王電鉄から譲渡された7700系も含めると、石川線の旅客用電動車6両のうち5両が換装済みとなります。
  • [5]2020年3月26日にはシングルアーム化されているのが目撃されています(のんきさんのツイート(Twitter))。
  • [6]2020年5月1日の時点では菱形パンタですが(take さんの Instagram 投稿(www.instagram.com))、11月11日にはシングルアーム化されているのを自分の目で目撃しています。
  • [7]2020年11月11日の時点では菱形パンタで運用されていましたが、12月28日にはシングルアーム化されているのが目撃されています(mizuki さんの Instagram 投稿(www.instagram.com))。
  • [8]南こう(・8・) さんのツイート(Twitter)