「2022ゆのまえ漫画フェスタ」の漫画家トークショーを聞いてきた
コロナ禍による中断を経て久しぶりの開催となったゆのまえ漫画フェスタ(www.town.yunomae.lg.jp
)ですが、今年は7年ぶりに久米田先生が登壇されるということでその雄姿を見に行ってきました。
湯前の訪問は2015年の「ゆのまえ漫画フェスタ」、2017年の「久米田康治のかくしごと展」に続き3回目です。過去の訪問記はこちら。
- 「2015ゆのまえ漫画フェスタ」で久米田康治先生のサインをもらってきた 〜その1 前夜祭編〜
- 「2015ゆのまえ漫画フェスタ」で久米田康治先生のサインをもらってきた 〜その2 サイン会編〜
- 「久米田康治のかくしごと展」を見に再び湯前へ
今回はイベントそのものや交通面の状況がこれまでとは大きく異なります。
一つは言うまでもなく先の見えないコロナ禍。「ゆのまえ漫画フェスタ」は当日のトークショーはもちろんですが、前夜祭とサイン会が恒例行事として存在しており、距離感の近さや実際に目の前で絵を描いていただけるといった内容から、個人的にはむしろそちらがメインと言っても過言ではないと思っているほどです。今年は残念ながら新型コロナの影響でそれらの開催はなかったのですが、その代わりかトークショーの時間が例年の30分から50分に拡大されたのは嬉しいところです。
もう一つは2020年7月に人吉周辺を襲った水害によりJR肥薩線やくま川鉄道が被災し、2年以上が経った今なお一部区間が不通のままとなっていることです。このため鉄道を利用しての湯前入りは困難となり、高速バスや路線バスを使うしかない状況となっています。もっとも九州外からの訪問においては鹿児島空港から高速バスで人吉まで移動するのが以前からの最短経路なため、遠征組にとっては影響は少ないとも言えます。
交通と宿泊
新型コロナに関していえば、不幸中の幸いというべきか第7波が収まり全国旅行支援(www.mlit.go.jp
)が始まったタイミングであり[1]、それを活用することで金銭的にはかなりおトクに移動することができました。
往復の交通と現地の宿泊を組み合わせた「交通付旅行商品」を適用させることで支援を最大限活用できるのですが、自分の使った旅行会社では人吉市や湯前町には対象の宿泊施設が存在しなかったため、
- フェスタ前夜の宿泊は個別に確保する(全国旅行支援なし)
- 往復の飛行機と、フェスタ当夜に鹿児島市内のホテルに宿泊する1泊3日のプランを全国旅行支援に適用させる
という方法を取りました。こうすることで飛行機代も安くなり、さらに3日間の滞在となるため湯前以外の観光も楽しめるというワケです。
参考までに、旅行会社を使わず交通機関と宿を個別に取った2015年の時と移動費用を比べてみましたが、1泊増やしたのにも関わらず半額程度の結果となりました。(九州内の移動費を除く)
2015年の遠征費用
概要 | 詳細 | 費用 |
---|---|---|
往路・飛行機(羽田空港 → 宮崎空港) | ソラシドエア普通席、特売り7日前 | ¥19,990 |
湯前での宿泊 | ブルートレインたらぎ | ¥3,080 |
復路・鉄道(人吉駅 → 新横浜駅) | 人吉→八代は特急自由席、博多→新横浜は新幹線自由席 | 運賃 ¥15,220 + 特急 ¥800 + 新幹線 ¥7,770 |
合計 ¥46,860
2022年の遠征費用
概要 | 詳細 | 費用 |
---|---|---|
往復飛行機 + ホテル1泊 | ANA 普通席 + ホテルアービック鹿児島 | ¥28,600 → 全国旅行支援適用 ¥20,600 |
湯前での宿泊 | ブルートレインたらぎ | ¥3,140 |
合計 ¥23,740 (鹿児島県内で使える ¥4,000 分のクーポンが付くので実質 ¥19,740)
前日の移動
今回は前夜祭がない一方で、ゆのまえ漫画ウィーク(www.town.yunomae.lg.jp
)が開催されており、町内周遊スタンプラリーに参加することで漫画家サイン色紙が当たる催しがありました。これはフェスタ前日が締め切りなので、どちらにせよ前日までには湯前入りしておかなければなりません。
17:00 までに指定4か所を回れば良いので時間的には余裕ありますが、価格面から飛行機は朝イチの便を選択。京急線で空港入りしますが、せっかくの第2ターミナルなので出発階に行く前にいったんターミナルビルの外に出て、『かくしごと』で後藤親子が湯前に行ったエピソードと同じカットを探します。
時間には余裕を持って空港に着いたのに、早朝で日の出前だったため明るくなるまで撮影を粘っていたら保安検査場の通過締め切り(出発時刻20分前)ギリギリとなってしまい、混雑した出発ロビーを駆け抜けて検査場のリーダーに QR コードをかざしたのが締め切り1分前(実際は30秒前くらい?)。あっぶなー。まあ LCC ではないので、列に並んでさえいれば多少の融通はしてくれたかもしれませんけれど。
鹿児島空港にはほぼ定刻に到着。 9:45 発の熊本行き高速バスきりしま号(nangoku-kotsu.com
)で人吉へ向かいます。
先にも書いたとおり、九州外から飛行機で湯前入りするにはこのように鹿児島空港から高速バスで人吉に移動するのが最短ルートとなります。湯前は熊本県にあるのにも関わらず、熊本空港ではなく鹿児島空港の方が近いというのは『かくしごと』の作中でも語られていましたね。
1時間ほどバスに揺られて人吉 IC に到着、ここから至近距離に湯前に行けるバスの停留所(くま川鉄道代替バス)があるのですが、午前中は本数が少なくここから乗るには周辺に若干の飲食店と本屋、コンビニくらいしかない場所で1時間半ほど待機する羽目になるのでちょっと避けたいところ。なので川沿いを歩いて人吉駅に向かいます。
人吉駅は肥薩線の八代方面、吉松方面、くま川鉄道の3系統が乗り入れるターミナルでしたが、水害でいずれも運休中。すなわち列車が1本も発着しない状態なのですが、なぜか JR のきっぷ売り場は営業しています。代行輸送の対応などで無人にはできない事情でもあるのでしょうか。せっかくなのでここで翌日に乗車する帰路の分のきっぷを発券してもらいます。窓口は駅長自らが対応していましたが、私の他には客もおらず手持ち無沙汰のようでした。
そして駅前では夏目友人帳×熊本県「人吉・球磨での優しい時間」のお手軽聖地巡礼。
12:08 の代替バスで湯前に向かいます。高速バスタイプのバスが3台連なっており、人吉出発時点では数人しか乗っておらずガラガラでしたが、途中の停留所から学生が多数乗車し、折り返しの便も学生で賑わっていました。代替バスは平日と土曜日のみの運行で日曜日は運休となることからも、実質的に通学用ということなのでしょう。
肥後西村で部分復旧している鉄道に乗り換えて湯前駅まで移動します。
町内周遊スタンプラリー
スタンプラリーは4か所の施設を回るものですが、うち3つは湯前駅の至近距離にあります。
まず向かったのは湯前まんが美術館(www.town.yunomae.lg.jp
)。2017年には「久米田康治のかくしごと展」が開催され、後に『かくしごと』の作中でも登場した場所です。
館内には2015年の「ゆのまえ漫画フェスタ」で描かれたイラストが展示されています。今年になって通路の照明が明るくなったり、額装をリニューアルしたりされたそうで、いまでも綺麗な状態で保管されているのは喜ばしい限りです。
続いては駅裏のレールウィング内にある湯前まんが図書館(okukuma.org
)へ。以前は駅に隣接した「湯〜とぴあ」の建物内にあったのですが、2017年に移設(www.town.yunomae.lg.jp
)されたようです。
ここには同じく2015年の「ゆのまえ漫画フェスタ」で描かれたイラスト色紙が展示されています。
今回のフェスタにおいても合作のイラスト色紙が贈られたようなので、次回来たときも忘れず見ておきたいですね。
その後は駅横の「湯〜とぴあ」でスタンプを押しつつレンタサイクル(www.nihon-kankou.or.jp
)を借ります。これは最後の施設であるゆのまえ温泉 湯楽里(www.y-yurari.co.jp
)のみ駅から離れており、徒歩だと40分ほどかかるためです。村営バスやまびこ(湯前線)(www.navitime.co.jp
)が近くを通っているにはあるのですが、土休日は1日2往復しかなく、少なくとも片道は徒歩となってしまうので、それなら自転車で行く方が楽だろうという判断です。施設は丘の上にあるのですが、レンタサイクルは電動自転車なので坂道も難なく上がれます。
途中、潮神社(おっぱい神社)、塞神社(www.town.yunomae.lg.jp
)に寄り道しつつ、湯楽里へ。ここで少し遅い昼食でもと思っていたのですが、漫画家の皆様方の貸切が入っているためかレストランは早いうちに閉められており、スタンプだけ押して退散。
それならばと自転車を返却して駅前のレストラン徳丸(chanpon.biz
)に行ったのですが、こちらも16時〜17時の休業時間(ディナータイムの準備?)に当たってしまい飯にありつけず。
店の再開まで1時間待っても良かったのですが、疲労もあったので 16:20 の列車で少し人吉方面に戻り、宿に向かいます。宿は2015年の訪問時と同じく寝台列車の客車を利用したブルートレインたらぎ(www.bluetrain-taragi.com
)。増税の関係か前回訪問時より少しだけ支払額が上がっていましたが、相変わらずリーズナブルな値段で泊まれるのはありがたいです。
フェスタ当日
当日は雨予報であり、傘を持参するくらいの対策はしていたのですが、明け方頃は雷が鳴り止まず、しかも1回は宿泊施設の車両そのものに落雷したのか轟音とともに室内の非常灯が自動点灯する始末。豪雨の中での開催も覚悟しましたが、8時頃には雨も止んできたので会場に向かいます。
地域の一大イベントとはいえ、このような場所では住民の移動も自家用車が中心なのでしょう。列車、バスとも増発することもなく普段どおりの運行で、多良木から湯前への移動は
- くま川鉄道の列車で 7:18 着(あまりに早すぎる)
- 路線バスで 8:33 着(これでも 9:30 の開会まで1時間ほどある)
- 路線バスで 10:09 着(トークショーには充分間に合うが開会からの席取りは無理)
のビミョーな3択であり、ちょうど良い便がない状況。
天候が良ければ 8:33 着のバスを利用するつもりでしたが、その時点では天候が回復しきっておらず、雨の中で開会を待つ可能性を考えるとツラみがあったので、しばらく宿で待機し、完全に雨の心配が無くなった9時半頃に出発。多良木 9:59 発 → 湯の前駅前 10:09 着のバスには早いので、町の散策がてらバスのルート沿いに歩いて行ったのですが、バスが来る頃にはすでに湯前駅の近くまで来てしまっていたので、最後まで徒歩で向かうことに。
多良木町からおよそ1時間歩いて湯前着。入場ゲートで検温を行い、まずはレールウィングへ。施設内にあるトイレ&展望台(?)のガラスに昨日はなかった久米田先生のイラストが追加されていました。
描かれたキャラクターは勝改蔵、彩園すず、名取羽美、坪内地丹、糸色望、後藤姫、都加逸子、都加伊澄、西仁亀エルの9人とうろペン。その下には「2022年11月12日(雨)」とあるので、おそらく降り出した夜間に描かれたのでしょうね。『かってに改蔵』のキャラクターが多いのはうれしいなあ。あれ、でも『せかどろ』は……?
いつまでも眺めていたいところですが、トークショーを行うステージに向かいます。
肝心のトークショー内容については Togetter に参加者のツイートをまとめており(togetter.com
)、詳細なレポートを書いて下さっている方もいらっしゃるためそちらを見てもらうこととして、せっかく撮影可のイベントだったので私からは動画によるダイジェスト版をお届けします。
トークショーの冒頭で村枝先生がコスプレの審査をするらしい
、締めの挨拶で司会者からこの後も会場内でお仕事がある
と仰っていたので、トークショー終了後も帰らず会場内にとどまっていたのですが、どうやらこれは 12:40〜13:20 のコスプレパフォーマンスのことだったようで、このプログラムでは先生方4名の席が用意され、コメントを求められるという一幕がありました。画質が良くないですが、TKU(テレビくまもと)のニュース映像で村枝先生が最前列に座っておられる様子が一瞬映っています[2]。
帰路
先生方のご帰還を見送った後、私も 14:00 の路線バスで会場を後にします。人吉 IC から往路と同じ高速バス「きりしま号」で鹿児島空港を通過し、今夜の宿泊地である鹿児島市内に向かいますが、終点まで行かず途中の「高速帖佐」バス停で下車、徒歩15分ほどの場所にある帖佐駅から JR 日豊線に乗り換えます。
わざわざそんなことをしたのは、JR 線の経路中にある鹿児島駅が『行け!!南国アイスホッケー部』に登場したこともあるので、日没後ではあるものの30年越しの聖地巡礼をしようというわけです。鹿児島駅は最近になって駅舎が建て替えられたり、駅前のリニューアル工事が行われたりしており、往時の面影は少なくなっているのですが、緩やかに湾曲したプラットホームは作中で描かれた形状を変わらず保持していました。
そんな感じで翌日午前中も西大山駅(JR 最南端の駅)と市内の天文館通りで数か所『南国』の聖地巡礼を行い、昼頃の特急列車で博多に向かいます。鹿児島中央→博多の移動を九州新幹線ではなく日豊線特急を2回乗り継いで行く物好きは多くないでしょうが、大分以南は未乗区間が多くこの際乗っておきたいという趣味的理由の他にも、九州ネットきっぷ(www.jrkyushu-kippu.jp
)利用で新幹線は ¥10,110 なのに対し、在来線特急は鹿児島中央→宮崎と宮崎→福岡市内の合計で ¥8,380 と、2割程度安く移動できるメリットがあるのです。
ところで復路の飛行機を福岡空港発にしたのは博多駅前にある博多マルイで畑健二郎展(www.0101.co.jp
)が開催されているため。東京会場にももちろん行っていましたが、せっかく九州に行くタイミングでこちらのイベントも博多で開催されているということで、師匠の色紙に再びご対面というわけです。
会場内のメッセージノートを見ると同じく湯前トークショーから畑展へハシゴしたファンもいたようで。
展示そのものは東京会場で堪能しているのと飛行機の時間も迫っていたことから[3]、色紙以外はサラッと見るに留めて空港へ向かいます。会場を出たのが 20:30 でしたが、会場が駅前だったのと福岡空港は博多駅から地下鉄で2駅という好立地なこともあり、こんな時間まで都市の中心部にいても最終の飛行機に間に合うというのが福岡のすごいところですね。
個人的な話になりますが、深夜の羽田着というと8年前に飛行機遅延で終電がなくなり、国際線ターミナルの吉野家前のベンチで一夜を明かした苦い思い出があり、藤田先生らが前日に乗った飛行機はかなり揺れたらしいこともあり少し覚悟していたのですが、こちらは順調でむしろ10分程度の早着。問題なく帰り着くことができました。
久米田先生はトークショーの最後の挨拶で(このメンバーだと喋ることがないので)置き物として次回も頑張りたいと思います
と仰っていたので、いやこれはもちろんジョークなのでしょうけど、ぜひ来年も湯前で楽しいトークを聞かせてほしいですね。